DXの基本4〜自治体DXを推進する理由

DXの基本4〜自治体DXを推進する理由

自治体がDXを推進する理由は、従来のヒト・モノ・カネという手段に依存した行政運営が困難になってきたためです。また、その背景には、少子高齢化、住民ニーズの多様化そしてデジタル技術の一般化が挙げられます。

まず、少子高齢化についてです。少子高齢化の進展は、自治体が活用するヒト・モノ・カネという社会関係資本を縮小させています。例えば、役所や地域を担うヒトは年々減少し、公共施設や道路等のモノを作ったり、維持したりすることもままなりません。さらに、税金や地域で回るカネもどんどん減っており、増えるのは借金ばかりです。

一方で、住民ニーズは多様化しており、行政の仕事はますます複雑・多岐に渡るようになっています。これらの肥大化する住民ニーズを、減少するヒト・モノ・カネという社会関係資本のみで回していくことには自ずと限界があります。

このような中、デジタル技術が一般化し、ヒト・モノ・カネに続く第4の要素として活用できるようになってきたことが、DXを推進する大きな要因となっています。なお、デジタル技術の一般化には3つの要素があります。利用費用の劇的減少、利用しやすさの劇的向上、そして選択肢の劇的増加です。以下、これらを掘り下げていきます。

①利用費用の「劇的」減少

私たちが普段使用しているパソコン、スマートフォン等に用いられている演算処理機能は、5〜10年前のスーパーコンピューターと同等の能力を持っています。その当時は、数億円から数十億円したものが、高々5〜10年程度で数千円から数万円にまで値段が下落します。数年前に購入した家や自動車がここまで市場価値が急落することはありませんから、如何にデジタル技術の市場価値の一般化の速度が速いかが窺えます。

また、クラウド型サービスの普及により、ITに対する投資は初めからフルスペックで行う必要がなくなりました。また、各種設備を備え付けでおく必要も無くなったため、全体的なコストも減少傾向になります。

さらに、通信インフラの整備も進み、各所にフリーWi-Fiが設置される等、情報通信にかかる費用も以前ほど高くはありません。

以上より、ソフトウェア、ハードウェア、インフラ等あらゆる面を総合的に勘案すると、デジタル技術を活用するための費用が劇的に減少しており、私たちがそれらを活用しやすくなっています。

②利用しやすさの「劇的」向上

30年近く前、PCを扱うためには、多少専門的な知識が必要でした。例えば、PCの初期はオペレーティングシステム(OS)が、テキスト入力であったため、コマンドを入力するための知識と技術が要求されました。

その後、マウスによるクリックで操作できるWindowsが爆発的に普及したことで、PCは文字通り、パーソナルなコンピューターとしての地位を確立しました。また、スマートフォンのように直感的に指タッチで操作できたり、スマートスピーカーのように音声で操作可能な端末が開発される等、デジタル技術の使い勝手(インターフェース)は、劇的に向上し続けています。

以上より、以前は一部の専門家や愛好家にしか用いることができなかったデジタル技術が、多くの人にとって身近な存在に変わりつつあります。スマートフォンの普及率が8割を超えていることからも、そのことは窺えます。

③選択肢の「劇的」増加

とある調査によると、日本人がスマートフォンに入れているアプリの平均数が100近くになるそうです。アプリは、ゲームのようなエンターテイメントを目的としたものから、私たちの生活の困りごとを解決してくれるものまで様々です。

例えば、翻訳アプリについてですが、これは、音声や文字に対する高い認識技術と深層学習も含む人工知能の活用等、非常に高度なデジタル技術を用いて構成されています。しかし、このような高度なデジタル技術を活用したアプリも、世の中にはたくさん無料で提供されており、その選択肢は無限にあると言っても過言ではありません。

以上より、私たちはある課題を解決したり、価値を創造していくために、デジタル技術において、選びきれないほどの選択肢を持っています。

3つの要素が組み合わさり指数的な成果を生み出してきたのが、GAFAやBATと総称される米国・中国のデジタル企業です。日本の多くの企業は、平成の30年間、デジタル技術をICT化という削減の方向にばかり用いてきたために、DXを積極的に推進してきた国外企業の後塵を拝することになっています。自治体においても、今後同様の事が起こらないとも限りません。