デジタル人材をシェアしてDX推進!|チーム愛媛DX推進支援センター 渡部久美子さんインタビュー

愛媛県と県内20市町で構成する「愛媛県・市町DX推進会議」は、共同でDXに関する専門人材を確保し、それぞれの自治体でシェアすることでDXを推進することを目的に、2022年4月から「高度デジタル人材シェアリング業務」に取り組んでいます。

この業務を推進する核となる「チーム愛媛DX推進支援センター」でセンター長を務める渡部久美子さんにインタビューしました!

生まれ故郷への恩返し

−「高度デジタル人材シェアリング業務」に取り組んだきっかけはなんですか?

今回の事業を受託したきっかけは、まさに私の出身地が愛媛県だということです。私の生まれ、そして父と母の生まれも愛媛県の今治市ということで、生まれた故郷に対して何か恩返しをしたいな、おじいちゃんおばあちゃんが喜んでくれるような仕事がしたいな、と思っていたところ、ご縁があり今回の事業に手を挙げさせていただいた次第です。

県と20の市町が専門人材をシェアしてDXを推進

−「高度デジタル人材シェアリング業務」について教えてください。

今回の業務を簡単に申し上げますと、愛媛県及び20市町のチームで愛媛のDXを推進することです。「高度デジタル人材シェアリング業務」という名称に、まず高度デジタル人材と書かれています。これは、デジタル人材やデジタルに関する専門家と言われる方であり、増えてきてはいますが、まだまだ貴重な存在です。そういったデジタル人材を愛媛県と20の市町で共有することで、その方々からDX推進における支援を受けるというのが「高度デジタル人材シェアリング業務」の内容です。

この業務には大きく分けて2つの特徴があり、1つ目の特徴が愛媛県DX推進専門官の配置です。DXの分野は多岐に渡ります。
ここでDXについておさらいすると、デジタルはあくまでも手段であり目的は変革すること、文化をつくっていくことです。その中でDXとは何かを具体的に考えると様々な分野があると思います。2つ目の特徴は、業務を統括してマネジメントするセンターの配置です。多岐にわたるステークホルダー(愛媛県庁、20市町の職員、5分野の専門官など)とのコミュニケーションや橋渡し、スケジュール調整、支援の推進などを担っており、私が責任者を務めています。

5つの分野と専門官の配置

−5つの分野について詳しく教えてください。

愛媛県では、今変革していくべき5つの分野をピックアップして変革が推進しされています。
1つ目はシステム・セキュリティです。庁舎のネットワークの構築やクラウド化、それらの要件定義、情報セキュリティポリシーの策定などを検討し推進していきます。
2つ目はデータ利活用です。住民の方々や民間の企業など、生活や事業の中から生み出されるデータをどのようにして活かして市町を発展させていくか、そのノウハウを共有していきます。
3つ目はデザイン・UI/UXです。すでにUI/UXという言葉は浸透してきていると思いますが、UX(住民が行政サービス等を通じて得られる体験)がデザインの基盤にあると私は思っています。デザインの定義は場合によって分かれることがありますが、私たちはユーザー本位で考えることだと定義して業務に取り組んでいます。このユーザー本位という言葉を一番大事にしています。サービスを利用する人は誰なのか、住民が求めているものは何なのかということを意識しています。
4つ目は広報・マーケティングです。どのようにして住民や県外の方に情報を届けるのか、計画を立て発信し分析するところまで一貫して、効果的に情報発信するための戦略を立てていきます。
5つ目は官民共創です。行政や民間のように2つに分けるのではなく、お互いが強みを生かし合って事業を推進していけるようにマネジメントしていきます。

官と民が混じり合うチーム

−行政と民間企業が共創するメリットは何ですか?

強みを生かし合えることだと思っています。私はもともと民間の企業で働いていましたが、2021年度から福島県会津地方にある磐梯町で地域プロジェクトマネージャーも務めています。また、個人事業主としても、いくつかの自治体でDXに関する支援や研修もさせていただいております。そのような経験を通して気づいたことが、官と民ではそれぞれ強みが違うということでした。

例えば、期間をかけずに意思決定をし、そしてチャレンジし、またPDCAを早いスピードで回すことを得意としていると思いますが、行政の職員の方々は一つ一つ条例規則に則りながら、定義を定め、書面を書き、しっかりとした承認フローをとって合意形成を進めるというところに長けていると思います。

強みが異なる人々がチームとなるからこそ、大きな変革ができると思っているので、まずチームである必要があり、行政と民間企業それぞれが強みを発揮しながら、両方を知っている人がバランスを取り、コミュニケーションを円滑にしていくのが理想だと思います。

これからの時代で大事なのはドキュメントではなく人

−DXの現場で感じていることを教えてください。

課題を解決できる人の人脈やコミュニティがあることがこの先重要になってくると感じています。
私も自治体DX白書に掲載されている事例や動画から勉強させていただいていますが、1冊の教科書があったとして、それを真似すれば上手くいく時代があったかもしれません。
ただ、今の時代は、去年までやっていたことが通用しなかったり、住民が持っているニーズや思いがとても早いスピードで変化していると思っています。

私が今まで最も多く質問されたことは「うまくいかなかったことは何ですか?」「失敗したことは何ですか?」ということです。これは同じ失敗をしたくないという気持ちもありますが、何かあった時にどう解決したらいいかを知りたいという意図から来る質問だと思っています。

課題に対して1年前の事例を真似したり、アップデートされていない知識で取り組んでも意味がないので、今の状況ならどう解決すればよいかを導き出せることが求められていると思います。なので、教科書などのドキュメントナレッジを準備する時代から、課題解決力がある人脈やコミュニティとつながりがあることが重要だということを現場で感じています。

インタビューの動画はこちら

動画ではインタビューのフルバージョンをご覧いただけます。記事の内容以外にも渡部さんのユニークな働き方や暮らしについてもお話しいただいています。

参考URL

愛媛県・市町DX推進会議 公式 note
https://ehime-pref.note.jp/

自治体DX推進のためのデジタル人材の確保の取組|総務省
https://www.soumu.go.jp/main_content/000818219.pdf