DXの基本2〜ICT化とDXの違い
「ICT化(高度情報化)」という言葉があります。行政用語としても20年以上の歴史があり、自治体でも注釈すら付けずに当たり前に使われています。実は、このICT化とDXの違いが曖昧である点が、自治体関係者の方のDXへの理解を大きく妨げていることが、多くの自治体関係者の方と接する中でわかりました。
ICT(Information and Communication Technology)とは情報通信技術のことで、ICT化とはアナログの業務やインフラをICTに代替していくことと定義できます。また、行政のICT化の場合、その主な目的は、組織の効率化であり、業務を情報通信技術に代替することです。
したがって、目線は業務本位であり、業務効率化、人員削減、経費削減といった言葉と親和性があります。デジタル技術の関係で自治体関係者とお話ししていると、こちらの文脈でデジタル技術の活用を捉えている人が少なくありません。
一方で、DXとは自治体・住民等が、デジタル技術も活用して、住民本位の行政・地域・社会等を再デザインするプロセスと定義しました。また、その主な目的は、住民サービスの向上であり、デジタル技術も用いて新しい価値を生み出し、行政の仕組み・あり方自体を変えることです。
したがって、目線は住民本位(時として職員本位)であり、住民接点(UI)、住民体験(UX)、個別最適化といった言葉と親和性があります。
大切なことは、ICT化とDXは異なる概念であるという点です。しかし、実際には両者は混同して捉えられたり、DXという名称を使っているもののICTの議論がなされたりしています。ここでも多くの自治体関係者の方が躓きます。