都道府県向け「みんなでつくろう、自治体DXセミナー」 11月1日(月)開催しました

 
自治体DX白書編集委員会は、日経デジタルフォーラムと共催で、11月1日(月)に第1回「みんなでつくろう、自治体DXセミナー」をオンラインにて開催いたしました。


 

都道府県による市区町村支援の先進事例と実際 (第1部より抜粋)

 

共同編集長 西嶌公基 なぜ「自治体DX白書.com」をはじめたのか。

「自治体DX白書.com」は、そもそも自治体の課題は何なのか、課題に対してどのようにどう取り組むべきか、という、潜在的にある課題の「本質」を共有するために始めた、と経緯を説明しました。「みんなでつくろう」がコンセプトの自治体DX白書により、誰しもが、より便利に、そしてより幸せを享受できる素敵な国づくりのお手伝いをしたいとの考えを示しました。今後、自治体領域のDX化は、国の方針や概算要求からみても国の最重要政策であることは間違いなく、その課題を皆で解決するためのサイトの活用の仕方とその将来設計に関しての意見を述べました。

共同編集長 菅原直敏 「都道府県による市区町村支援の実際」

自治体の現役CDOという実践者の立場から、自治体DX全体手順書【第1.0版】に記載されている都道府県による市区町村支援について、事例集にも掲載された先進事例に基づき、実際の現状と課題を提起しました。

①「市区町村支援の概要」では、なぜ都道府県が市区町村の支援をするのかという目的、必要性、手法や、進めるにあたっての前提条件について検討がありました。

②「市区町村支援の分類と事例」では、垂直支援型や総合支援型や水平協力型など、都道府県による市区町村支援の分類と代表的な自治体を紹介したうえで、自治体内での機運の盛り上げ方や、重点的な取組の推進の仕方、ビジョン策定のポイントなどが示されました。

③「事例詳説」においては、菅原共同編集委員長が愛媛県へ提案した、自治体DX推進計画のあらましや、知事や全市町長が参加する連携会議による丁寧な推進体制の積み上げ方、全市町へのオンライン・オフラインによるヒアリングや研修など、「チーム愛媛」による県と市町のDXの進捗についての共有がありました。ポイントとして、徹底したニーズ把握や、県と市町で協働でやることに特化することなど、実践者ならではの提言がありました。

パネルディスカッション:自治体DX事例の紹介(第2部より抜粋)

自治体DX事例の紹介では、愛媛県の森俊人氏より「愛媛県の市区町村連携」について、福井県の高村康平氏より「福井県の防災DX」の事例を紹介いただきました。

 

①愛媛県 企画振興部デジタル戦略局デジタルシフト推進課企画グループ担当係長 森俊人氏

「県と市町が共同して進める『チーム愛媛』のDX」として、インバウンド誘客促進やサイクリスト誘致促進などのDXモデル事業や、コロナ禍におけるECなどのデジタルマーケティングの推進の進捗が紹介されました。また、令和2年4月に設置された「愛媛県デジタル総合戦略本部」や、同9月からのデジタルコーディネーターの設置、愛媛県のデジタル総合戦略の策定の基本方針に共有があり、現在の取組としてDX元年と位置付けた令和3年度のデジタルコーディネーター拡大などの体制強化や官民共創デジタルプラットフォーム「エールラボえひめ」の運用開始についてお話いただきました。

トークセッション(菅原、西嶌、森氏、司会渡邉)

Q(司会):市町との連携を円滑にするうで大事にされていることは?

A(森氏):県と市町のトップ同士の話し合いだけではうまくはいかない。市町によって取り組み状況や条件もちがう、どうすれば職員がデジタルをうまく使っていけるか、丁寧な対話が必要と感じています。

Q(西嶌):DXを推進するうえで、ぶつかってしまう壁はありますか?

A(森氏):DXに限らず「ヒト、モノ、カネ」が壁になることが多いと思いますが、愛媛のDXに関しては今はあまり壁はない状態です。今後、市町に対して業務、予算、議会などでの負担がかかり壁になってくることもあるかと思います。リソースにも限界がありますが、一緒になってのサポートをしていきたい。

Q(西嶌):住民目線で、愛媛県のDX推進をどのように進めたいとお考えですか。

A(森氏):様々な地域課題と向き合っている市町、新規開拓をしようとしている民間企業の方々と、実効性のある取組をしていきたいと思っています。あくまでデジタルは手段でしかない。やはり住民の求めることを、愛媛県のために進めていきたい。そのための人づくりや、民間企業との共創だと考えています。

A (菅原):この愛媛県のやり方は愛媛県だからうまくいったところはあります。たとえば神奈川県だと政令指定都市などはニーズが合わない、必要ない場合もある。それから、私のような支援側の愛媛県での働き方について、オンライン参加を積極的に認めるなど県庁のご理解があった。

 

②福井県 土木部道路保全課 雪・安全対策グループ主事 高村康平氏

県知事自らが提唱する「県民主役の県政」をはじめに、福井県の5つの「職員クレド」にのっとって業務が行われていること、「チャレンジ制作提案制度」により若手が主体となったプロジェクトが進行されていることを紹介いただきました。防災DXの取り組みは、過去5年間で3回も災害対策本部を設置するほど災害が増加している一方で、行政職員数が減少する現状があり喫緊の課題とされ、2018年2月と2021年1月の豪雪の経験をふまえて取り組んだ実施事例が共有されました。Spectee Proを導入し、AIが路面など現場の状態を判別する実証実験や、AI音声技術による道路規制情報の24時間自動応対、GPSから取得した除雪状況の公表など全国に先駆けた取組をお話しいただきました。

トークセッション:福井県山本氏、高村氏 Spectee代表取締役CEO村上建治郎氏

Q(司会):今回ご紹介いただいた取組の県庁内での評判はいかがですか

A(高村氏):1つ目のAIによる路面状態判別は全国初の取組であり、土木部とDXが距離が遠いと思われていたが幹部の支援があって進めることができました。これまで災害が起こると県庁の職員が現場に行くことが求められたが全部をカバーすることが不可能であり、AIで情報を収集するようになり、職員の業務の中にもAIが入ってくるようになりました。

Q(西嶌):誰も知らない技術サービスを県に取り入れるのは難しかったのではないか。

A(村上氏):新しいソリューションは受け入れがたいものがある。ITは実態がわからない側面がある。最初のハードルはとても高く、導入してみないとわからないものに予算がつくのは難しい。担当の方の抱えている問題点が解決されることを丁寧に説明し、また上司の方に説明するステップを一緒に踏めるかが導入にあたってはすごく重要と思います。

A(山本氏):福井県の場合は「チャレンジ政策提案」という若手が企画して直接知事に提案できる仕組みがありました。一方で、知事がいいと言っても、それをやってどうなるのだという反対意見もあったが、1つ1つ説明をしながら理解を得ていった。結果、土木部としてもDXを取り組んでいこうとなりました。

Q(西嶌):官公庁業務は仕様があって仕様通りに応札となりますが、DXならではのアジャイルな運用は可能でしょうか。

A(山本氏):公平な選定プロセスは守らないといけないですが、プロポーザルをする際に細かいところはガチガチに決めないで提案してもらうなど、やり方を工夫して進めていこうと考えています。

 


 
全国の自治体のDX担当部署の方をはじめ、民間企業からも多数のご参加をいただきました。登壇者のみなさま、参加者のみなさま、ありがとうございました。

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