自治体DX白書編集委員会は、内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局が主催した、令和4年度夏のDigi田甲子園でアイデア部門ベスト4を受賞した取り組みを舞鶴市役所企画政策課 西忠幸さまにインタビューをさせていただきました!
ブランド京野菜「万願寺甘とう」データを活用したスマート栽培による持続可能な産地づくり について
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/menubook/2022_summer/0016.htm
農業をデジタル化してブランド野菜をつくる
−ブランド京野菜「万願寺甘とう」データを活用したスマート栽培による持続可能な産地づくりについて教えてください
官民が連携し、IoT機器を通じたデータ利活用型の「スマート万願寺栽培」を実装することにより、ブランド京野菜である万願寺甘とうの生産量の安定化・収量向上を実現するとともに、伝統野菜を核とした産地づくりを推し進め、担い手の育成・確保等にも繋げることにより持続可能な一次産業の振興を図る取り組みです。
−導入のきっかけや背景を教えてください
舞鶴市では、「先進技術を活用した持続可能なまちづくり」に取り組んできました。企業や研究機関、教育機関等と連携を深め、まちづくりの中に先進技術を積極的に活用することで、日常生活における利便性の向上や都市機能の効率化を実現し、将来にわたり住み続けられるまちの実現を目指すもので、こうした本市の取組は、2019年に内閣府のSDGs未来都市・SDGsモデル事業に選定いただきました。
こうした経過の中、市と連携企業(KDDI)が協議を重ねる中で「一次産業分野における課題解決に先進技術(モニタリング技術)が活用できるのではないか」との着想を得ました。舞鶴市の特産品であり栽培管理が難しい「万願寺甘とう」に着目し、データ利活用型のスマート万願寺栽培に調整することになりました。
当該取組は、市と連携企業(KDDI)、JA京都にのくに万願寺甘とう部会協議会(生産者団体)、京都丹の国農業協同組合(JA),京都府の5者の連携による取組であり、対面・WEB様々な方法により情報共有や協議を重ねる中で相互理解を深めながら取り組みを進めてきました。
生産現場の勘と経験をデータで見える化
−農業にデジタル技術をどのように取り入れているか教えてください。
我々の取り組みは、高収量生産者の栽培環境(温度や湿度、土壌水量)データを収集し、見える化・共有することでデータ利活用型のスマート万願寺栽培の実現を目指すものです。高収量生産者8名のデータを収集する際に使用する機器を同一システムのセンサーに統一することで同一規格でのデータ収集ができ、異なる環境下での生育状況等が容易に比較できるようになりました。
取得したデータは栽培管理システムで部会員に共有するとともに、定例会でもデータを共有するなど、アナログな手法も併用することで、データによるスマート農業に、経験に基づく個々のノウハウも反映させることができています。
収集したデータを利活用することでノウハウが共有され、新規就農者や若手の生産者に対してのマニュアルになっています。こうした取組は、生産地全体の底上げやレベルアップに繋がっているものと考えます。
−将来の展望やシステムの活用を教えてください
今後このシステムは万願寺甘とう以外の農産物への応用・展開を図っていきたいと思っています。また水産業の分野にも活かしていき、一次産業全体の発展に結びつけたいと考えています。
防災分野においてもモニタリング技術の導入を進めており、市内の河川データの取得やアンダーパスの監視にモニタリング技術を活用する取組を進めています。モニタリング技術の活用により、河川水位等の情報を自動で収集しワンストップ化することが可能となります。これまでのように、職員が河川まで視認に行く必要がなくなるため、防災対応における省力化が実現しています。
また、集めた防災情報を分かりやすく市民に発信する仕組み作りも進めています。こうしたモニタリング技術の活用の他にも、交通(住民の移動手段の確保)や子育て支援など様々な分野でデジタル技術の活用に取り組んでいます。
今後、人的パワーが減っていくと予想されます。こうした中で引き続き住民サービスを維持・向上させていくためには、自治体におけるデジタル技術の積極的な活用は、ますます重要な取組になっていくものと考えています。
参考URL
舞鶴市 SDGs未来都市計画(舞鶴市WEBサイトより)
https://www.city.maizuru.kyoto.jp/shisei/0000005338.html
舞鶴市について
人口:77,177人(2023年7月時点)
面積:342.12 km²
舞鶴市は、京都府北東部にあり、京阪神から100km圏に位置しています。
旧海軍の歴史が残る東地区、城下町の名残が残る西地区、海と山の自然に囲まれた漁村地域の大浦地区、農業の盛んな加佐地区の4つ地区があります。約98kmにおよぶ海岸線は入江と岬が美しく交差したリアス式海岸で、若狭湾国定公園に指定されています。また、舞鶴引揚記念館の収蔵資料の一部はユネスコ世界記憶遺産に登録されるなど、自然豊かで深い歴史と文化が息づく街です。
舞鶴市WEBサイト
https://www.city.maizuru.kyoto.jp/