今回、自治体DX白書編集委員会は、福岡市 DX戦略部 サービスデザイン担当部長 河津 真樹子さん、DX戦略課長 橋本 康範さん、広報戦略室広報課の松田 晃さんにインタビューをさせていただきました。こちらの記事では、広報の視点でLINEとの連携施策をどのように住民サービスに活用したのか、当時の課題感や具体的な施策事例まで見ていきたいと思います。
政令市初LINE公式アカウントの運用をスタート
―福岡市でLINE公式アカウントの運用を開始した当初はどのような取組をしていましたか?
松田:福岡市では、2012年政令市初の試みとしてLINE公式アカウント(旧LINE@)の運用を開始しました。当時は、緊急情報はプッシュ通知のメッセージで、市政情報・観光情報はタイムラインで情報を配信するなど、メッセージとタイムラインの機能を用途ごとに使い分けて運用していましたが、いわゆる同一情報を多数に送る「One to Many」の情報配信でした。しかしながら、「One to Many」の情報配信では、自分が欲しいと思っていない情報も届いてしまうこともあり、利用者がより快適に情報を受け取れるよう、「One to One」のパーソナライズした情報配信の必要性を課題として認識しておりました。
生活密着型のパーソナライズ配信
―パーソナライズ配信とは、どのような情報を発信していたのでしょうか?
松田:約半年間の実証実験を経て、2017年にLINE公式アカウントを活用した「One to One」配信をスタートしました。スタート時は、まずは4項目「防災、ごみの日、子育て、お知らせ」の中から利用者が受け取りたい情報を選択していただきました。より多くの市民に利用してもらうためのPR施策として、市長の定例会見のほか、LINEさんにもご協力いただき、オリジナルスタンプを配布しました。その結果、サービス開始後2日間で友だちが10万人を突破しました。
―市民の方は、日々の生活でLINEをどのように活用されていますか?
松田:福岡市LINE公式アカウントでは現在、暮らしに役立つ5つの便利な機能があります。
「1.情報配信2.家庭ごみの分別検索 3.日常生活のよくある問い合わせに関するチャットボット機能(生活情報) 4.道路・公園損傷報告 5.防災情報」。その中でも、道路・公園損傷報告の機能では、住民が道路や公園の不具合を見つけたとき、LINE上で写真と位置情報で簡単に市に通報することができます。LINEに機能を追加後、従来電話で通報をしてくださっていた方に加え、新たにLINE経由での報告も増え、担当部署としてもより迅速、的確に状況を把握できるようになりました。
LINEを使って行政サービスをより身近に
松田:LINEの今後の活用として、一人ひとりの市民ニーズに応じた情報発信を中核に据え、情報の選択できる種類や、サービス分野の拡大を検討しております。LINEという身近なツールを取り入れることで、行政サービス自体もより手軽に、より便利なものにしていきたいと考えています。
―最後に、全国のDX推進に取り組まれる自治体職員さまに、福岡市さまからメッセージをください!
どこの自治体も、デジタルに詳しい人は限られており、実際にDXを推進してみると、思いもよらない障壁や困難があるかと思います。そんな時に、デジタルが分からない人でも使いやすく、みんなが共感できるようなことばを添えて、施策を実行することが大切だと考えています。1歩目で大きな目標にたどりつけなくても、小さい成果を積み重ねてゴールにたどりつけるものだと思っています。
編集者あとがき
今回は福岡市のDX推進を「DX戦略課」、「広報課」の視点から紹介させていただきました。それぞれの役割やミッションがある中で、どちらにも共通していたのは 「住民視点」 でDXをどう活用していくのかという点でした。住民に、どのような行政サービスを提供できるのか考え続ける職員の皆さまの真っ直ぐな想いを感じました。DXは今不便に感じていることやもっと手間なくできることなど、「こうなればいいのに!」という気づきからサービスを変え新たな仕組みを動かし続ける躍進力になります。
今までなかったものを取り入れる、新しい事を次の常識にするのは様々な壁があるかと思いますが、今回の記事やその他事例が、読者皆さまの実現したい目標に対し、手段としてDXが活用できないか考えるきっかけになれば幸いです。