【#ホンネのDX】農業や物流とデジタル技術|新潟県津南町長 桑原悠さん(2)

農産物流通デジタル化へ背中押す支援


菅原:すごいですね、まさにすべてを活かすという。テーマ2に行きたいのですが、農業のお話もありましたし、あともうひとつ面白いと思ったのは環境負荷を見える化する、というお話ですが、課題を解決したり価値を作るにあたって今までのやり方だけではなくてデジタルデータを使って進めていくと、さらに上手くいくところもあるんだろうなと聞いていて思ったんですけれども。

桑原町長:いろいろありますが意外にDXをやってるなぁと。DXをやろう!というところからスタートしたわけではないのですが、いろいろな課題設定がある中でそれを解決する手法としてDXもあるという考え方で振り返ると、いろいろうちらやってるじゃん!って。

例えばそのひとつとして、コロナ禍で物産展に行ってPRをすることができなくなり、出ていって販売するというのが難しくなってきている一方で、家庭需要も生まれていると聞いています。コロナ禍で、さらにこれだけの食料基地のなかで、津南町では農産物の生産を進めていくなかで家庭重要向けに何かできないかということを役場のみんなで話し合いました。そこから販売対策チームが立ち上がり、それが若手職員なんです。

じゃあネットで売ればいいじゃん!って。まあネットで売るって、農産物も売れるというのは当たり前になりつつありますけれど、対応している農家さんや販売業者さんもそう多くはなかったんです。徹底的に農産物のオンラインショッピング化もしよう、ECサイト立ち上げをしようということになり、80%ぐらいの補助率で今回、農家さんや販売業者を支援しホームページにECサイトつけたり、リニューアルしたりするための費用を支援しています。あとはいろいろなサイトに登録するときの登録料の支援も。

こういうとき中途半端にやっては駄目だなってみんなで話し合っていて、かなりがっつり思いっきりやろうということになり、すごく思い切った支援策をしています。コロナ禍なので特に。

スマート農業が農業への入口を広くする

菅原:確かにそうですね、この手のはなしって、やるまでガッてやらなきゃいけなくて、小出しでは駄目ですね。やるならバーッと。

桑原町長:そんな感じですね、あとはスマート農業。整備した農地を有効に活用したいので、土地利用型の品目、キャベツとかいろいろ作ろうと進めていくなかで、機械化で作っている品目もあります。センシングドローンを使って生育状況を見みながら管理をしたり、生産から収穫までを機械化しているんですけど。センシングドローンを使う工程をいれたりとそういった技術を活用して、スマート農業です、というのを実証実験としてやっています。

菅原:種付けから最後の収穫までを一気通貫で(行うことを)昔は「機械化」と言ったのですが、いまは「スマート化」なんですよね。

たぶんポイントとなるのはデータで、データを一気通貫でできると米はどう管理したらいいかとか、もっというとその出口となるEコマース、そこと繋がっていると売上のニーズやそのマーケット状況も、究極、そこまで(データを)当ててAIで解析しながら進めていくことも、別に夢じゃないですよね。

桑原町長:そうですね。そういうことですよね。
菅原:やはりそれがデータの良さですし。

桑原町長:いま、実証実験でデータを取っています。労働時間が何%削減されるかや、収量がどれくらいアップするかというデータを取っていて、いいデータが取れてきています。あとは、農家さんが疲れにくくなったよ、というようなデータも取れていて…
菅原:昔は農業って経験と勘に頼ってやるところが多かったと思います。それも、熟練してくればそれなりのものになりますけど、みんながそこまでできるわけでもなくて。こういう(スマート農業のような)形になると省人化、省力化される部分もあるし、津南町の農家の方たちはやはり基本高齢で担い手がなかなか見つかりづらいなかで、若い人が参加しやすくなるし、そのハードルも低い、収益性も高いし、もっと極端なはなし現場にいなくても(農業が)できるようになると、これってもう、農業なんだけど、知的産業ですよね。

桑原町長:そうですよね。これからの担い手対策という意味でも取り組んでいます。で、誰でも農業ができるという形にしたいと思っていて、

菅原:素晴らしいですね。

担い手不足解消へ、最初の一歩

桑原町長:農業っていわゆる、力のある男性がやる仕事っていう感じで。(例えば)重いキャベツ(を運ぶ作業)とかがありますが、女性でもできるよ、軽トラに乗りながら草刈り機を操縦(して農業が)できるよ!みたいな。それだったら女性でもできるということで、誰でも農業に参画しやすいようにという思いもあります。

菅原:だからいま実証実験をしていて、(将来は)それができるようになってくると。すごいですね、しかもポテンシャルを感じたのは、結局その(システム)を動かすのって電力を使うわけじゃないですか。だからもう脱炭素のはなしになりますよね。そうなると、すべてのものが国際標準というか全世界が目指しているところまでいっちゃっていますもん。

桑原町長:あはは。これは実は役場のなかではいよいよ津南町の時代が来たかな?って話をしているんですよ。冗談ですけど!
菅原:冗談ではないと思いますよ。なんというか、いろいろな寄り戻しがあって、今まで日本が苦労していた一次産業(のような分野)がにっちもさっちも行かなくなったからこそ、バン!と変える飛び技術を使っていく可能性ってありますもんね。

桑原町長:そうですね、本当に。でもこの過程ではいろいろなことあります。スマート農業の実証実験を行うときも果たしてこれが「スマート農業」って津南町で受け入れられるのだろうか、これが農業だって認められるだろうかと不安な気持ちで、私も担当者も始めたところがありましたが、やり始めてみなさんに見ていただいたら「あ、そういうことなんだぁ、津南町でもやれるかもしれない」と。特に若い人の見学が多かったのです。このように、心配があって一歩踏み出すときすごく勇気が必要だったんですけど、やってみてよかったし、これから高齢化し離農者が増えるなかで農地を守っていくためには土地をなるべく耕していたほうがいいわけで、策を打たずに時間だけすぎるよりは対策をしていくということができてよかったなと思っています。まだまだこれからですが、一歩一歩踏み出しているという感じです。

菅原:すごいと思います。一歩踏み出すと、そこから1から10と改良していく作業だからいいですけど、やっぱり0から1って何でもそうですが一番大変で。ものを動かすときというのは物理でもそうですけど、一番パワーが要るのですごいなと。やっぱり全国各地の自治体さん、特に地方自治体とお話ししていると、特に山間地域では農業、海に近いところであれば水産業をどうしたらいいのだろうかと(悩みを抱えています)。担い手もいないし、生産性も低いし。いまのお話って、全国で(抱えている)同じような波を、一次産業を抱えている自治体さんに、ものすごく勇気を与える話なんじゃないかなと聞いていて思いました。津南町にお伺いしたときは取材をぜひさせていただけたらと思います。

桑原町長:ぜひ!

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