キャッシュレス事例 「三鷹市×PayCAS」


都内初!「キャッシュレス決済」と「セミセルフレジ」の同時導入。
「役所」といえば、各種証明書の発行に必要な場所でありながら、混雑や待ち時間が長いイメージをお持ちの方も多いかと思います。
そんな“永遠の課題”に対し、東京・三鷹市はデジタルの力で解決策を見つけました。

三鷹市役所市民課総合窓口では2021年1月18日、都内の役所では初となる「キャッシュレス決済」と「セミセルフレジ」の同時導入を果たしました。
それにより混雑や待ち時間はどうなったのでしょうか。導入担当者の三鷹市役所 青木涼子主査へのインタビュー内容を交え事例を紹介させていただきます。

キャッシュレスへの転機は“コロナ禍“

―なぜ市役所に「キャッシュレス決済」と「セミセルフレジ」を同時に導入しようと考えたのでしょう?
三鷹市役所では、各種証明書を発行する際の手数料のお支払いは、現金のみに対応していました。しかし、最近はご利用者様から「電子マネーは使えないの?」「クレジットカードは?」といった声も寄せられていました。また、総務省や経済産業省がキャッシュレス決済を推進する政策を進めていることもあり、お支払いのキャッシュレス化は検討課題となっていました。

―2021年1月のタイミングで導入した理由は?
新型コロナウィルス感染症の感染拡大が大きなきっかけになりました。現金の受け渡しには、ご利用者様と職員の接触が起こります。また、密を回避するために、ご利用者様の滞在時間を減らす必要もありました。
そこで、3月・4月の繁忙期までにキャッシュレス決済とセミセルフレジの導入を目指しました。実際には職員が新しいオペレーションに慣れるまでの時間も考慮し、導入時期を1月18日に決定しました。実はこれまでにも待ち時間や滞在時間を減らす取り組みを行ってきました。例えば、窓口の混雑状況をWEB上で公開するシステムや、増加するマイナンバーカード交付の専用窓口の増設、交付予約システムの導入をしてきました。それでも、最後のところで現金の授受というリスクが残るので大きな課題であると捉えました。
キャッシュレス決済だけであれば、もともとあるレジ機を利用して導入することができるので、まずはキャッシュレス決済だけを導入することも検討しました。ただ、現金を利用される方が圧倒的に多いと予測したので、人の手を介さず自動精算できるセミセルフレジもあわせて導入することに踏み切りました。

できる限り多くの決済手段に対応したい

―導入までのスケジュールを教えてください
導入の検討が始まったのが2020年夏頃で、各種予算が通って事務手続きを進められるようになったのが、11月の初旬でした。そこから翌年1月18日までの2ヶ月半で、取引企業様とのやりとりや、内部での調整を進めました。

―導入にあたり気を付けたポイントは何でしょうか?
最も重視したのは、交通系ICをはじめとする「電子マネー」と、各社の「クレジットカード」、PayPayやLINEPayなどの「QR決済」という、キャッシュレス決済の全手段が使えるようにすることでした。
対応できる決済サービスの種類が多いほど、ご利用者様にキャッシュレス決済を使っていただける割合が増え、より我々の課題解決にも近づくと考えたからです。
それに加え、キャッシュレス決済をする際に、職員が金額をPOSシステムと決済端末に2度打ちしないで済む形にすることも、必須条件でした。2度打ちは、オペレーションミスを生む大きな要因だと考えたからです。

―職員へのレクチャーは、どのように行いましたか?
準備の期間が限られていていたこともあり、実機を使っての職員へのレクチャーは、2日間で行いました。それとあわせて作成したのが、システムの取扱説明書の内容を抜粋してまとめた、「困った時はこうしましょう」という独自マニュアルです。PDFでも配付しましたが、それをプリントアウトして現場に常に置いておくようにしました。

―導入するにあたり、特に大変だったことは?
限られたスケジュールの中で、前例のない手続きを各部署と調整しながら進めていくのが大変でした。内部の会計処理もこれまでとは違うものになるので、その調整をする必要もありました。

約6万6千回の証明書交付手数料の現金授受が一切なくなる

―導入してみて、率直にどう感じましたか?
まずは、ご利用者の皆様に思った以上にスムーズに使っていただけるなと感じました。そして、キャッシュレス決済の導入で、ご利用者様の滞在時間が短縮されることを実感しました。お1人あたりは1~2分の短縮であっても、それが積み重なると、1日トータルで30~40分、数時間になっていきます。積もり積もって大きな違いになるので、業務の仕組みそのものを整えることは、やはり重要だと思いました。
利用者様からも「すごく便利になったね」といったお褒めの言葉や、「市役所でもこういうのを取り入れるのね」と感嘆の声をいただき、あらためて「導入してよかったな」と感じました。実際のところ、これまで市民課総合窓口では年間約6万6千件の証明書等発行を行ってきましたので(※2019年度実績)、要はその6万6千件の現金授受が一切なくなることになります。

全27種のキャッシュレス決済を1つの端末でDX

―PayCASのキャッシュレス決済システムのメリットは何でしょうか?
最も大きいのは、キャッシュレス決済用の端末が1つで済むことです。実は導入する際には、電子マネーでの決済はこの端末、クレジットカード決済はこの端末と、複数の端末が必要なシステムも候補に挙がっていました。ただ、役所の窓口では会計だけでなく証明書を受け渡す業務もありますので、スペースが限られます。端末が1つで済むと、整理整頓された状態で窓口業務を行えるのでとても魅力的です。
それに加え、入金確認がとてもラクです。三鷹市の窓口では全27種類のキャッシュレス決済サービスに対応しており、各事業者様から別々に入金が行われると、そのぶん業務が非常に煩雑になります。一方で、PayCASのシステムでは、各事業者様からの入金がまとめられ、PayCASからの入金に1本化されるので、これだけ多くの決済サービスに対応していながらも、入金確認の負担が軽減されています。

―今後、三鷹市役所の窓口業務を、どのようにしていきたいですか?
キャッシュレス決済の利用率をさらに高めていきたいです。約17%という現状の数字を、30~40%まで上げるのが喫緊の目標です。さらには窓口の手続き自体もデジタル化を進め、「スムーズに証明書を取得できる」とか、「そもそも役所に来なくても用が足りる」といった形にしていきたいです。キャッシュレス決済とセミセルフレジに関しては、当役所内の各部署から導入に関する問い合わせがきています。この仕組みが他のセクションにもどんどん広がり、市役所全体が「新しい生活様式に対応した窓口サービス」となったら、素晴らしいですね。

PayCASで「全決済サービスを、1端末で処理」

今回の三鷹市役所様のキャッシュレス導入で、PayCASの決済システムと同時導入されたのが、ビジコム社のPOSレジです。担当者の高橋様(株式会社ビジコム ソリューション営業部 部長)に、POSシステム側からみたPayCASの魅力を伺いました。

―POSレジの特徴をご紹介ください
当社は、POSのパッケージ販売で30年以上の実績があります。とりわけ自治体様や地方公共団体様からは、セミセルフレジ(公金収納POSレジ)を100万円以下で導入できる点で、大きな支持をいただいております。
POSレジと自動釣銭機、キャッシュレス決済のセットだと、200万円以上かかることが一般的なので、今回、三鷹市役所様からも、まずはコストの低さに大変驚かれました。
それと当社のPOSレジでもう一つ特徴的なのが、業種ごとにソフトをカスタマイズするのではなく、ワンパッケージでご提供している点です。

―PayCASの魅力とは?
当社が注目しているのは、キャッシュレス決済サービスが多様化する中、30種類以上にも及ぶキャッシュレス決済サービスの全てを1つの端末で処理し、1つの会社で入金をまとめることができるところです。また、POSレジとスムーズに連携できるところも、PayCASの魅力です。POSレジと決済端末を連携させないと、金額を二度打ちしなければならなくなります。金額の打ち間違いの原因となるだけではなく、職員様の負担とお客様の待ち時間の双方が増えるので、当社ではPOSレジとキャッシュレス決済端末の連携は“必須”と考えています。

―今回の三鷹市役所への導入事例をどう位置付けていますか?
実はこの1ヶ月あまりで、全国の自治体様や公共団体様から、セミセルフレジ・キャッシュレス決済導入のお問い合わせを60件近くいただいております(2021年4月現在)。その多くが、「三鷹市役所の事例を見た」というお客様です。今回の三鷹市役所様の事例が良いモデルケースになっていることを実感します。

 


 三鷹市について
人口約19万人。「水と緑の公園都市」のキャッチフレーズ通り、 23区に隣接しながらも緑が豊かで暮らしやすいことが魅力。時代の空気感をいち早く捉え、市民ニーズに合致したさまざまな取り組みを行っている。