嬬恋村 観光・関係人口増加のための嬬恋スマートシティ|Digi田甲子園 実装部門(町・村)内閣総理大臣賞 優勝

自治体DX白書編集委員会は、内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局が主催した、令和4年度夏のDigi田甲子園で実装部門(町・村)内閣総理大臣賞 優勝を受賞した取り組みを、嬬恋村役場 未来創造課 デジタル推進室長 山口倫照さまにインタビューをさせていただきました!

デジ田メニューブック「観光・関係人口増加のための嬬恋スマートシティ」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/menubook/2022_summer/0031.html

データとLINE公式アカウントを活用した地域活性

−観光・関係人口増加のための嬬恋スマートシティについて教えてください

令和2年度からソリューション開発、スマートシティを構築しはじめました。都市OSを活用した観光スマートシティとして、観光客の人流やパネルアンケートなどのビッグデータを分析し、集約した観光データはプッシュ通知で情報を提供しファンを増やしています。また、防災スマートシティとデータを共有しており、1つのLINE公式アカウントを通じて観光と防災の情報を提供しています。

−導入のきっかけや背景を教えてください

平成5年には300万人ほどいた観光客が年々減少していき、平成30年には200万人ほどまで減少しているという課題がありました。嬬恋村には温泉やキャンプ場などもあり自然豊かな所ではありますが、近隣には草津町や軽井沢町があり、どうしてもそちらに観光客が流れてしまう傾向にありました。さらにコロナにより、80万人くらいまで落ち込んでしまいました。

コロナ禍の中、この課題にどのような対策をしていくかを観光商工課や観光協会などの関係団体と話し合いを重ねていきました。前年度に構築した防災スマートシティで取得したデータを活用して、観光客が求めているものや来村ルートなどを調査し、そのエビデンスを基に観光業を見直し、事業者に調査結果を還元しています。

調査前には軽井沢町から草津町に抜けることが多いと予測していましたが、意外と他からのルートでお越しくださる方も多く、イベントを開催する場所の再検討や観光業に対して村のビジョン設計に役立っています。

LINEのUI/UXに着目し交流を創出

−どうしてツールにLINEを採用したのですか?

国内ではLINEのシェアが高く、住民向けアンケートの結果でもLINEの利用率が高かったので決めました。あまり迷うことなく即決定に近かったです。住民視点で考えた時にLINEの導入率が高いこと、またお友達追加しやすいというところも決め手でした。
また、プッシュ型で発信できることが重要でした。防災という観点でみた時、普段は見なくても何か起こった時に通知が来ると、それからは何か起きてるのではないかとトーク画面を気にし始めると思うので、そういう状況を作れるのはLINEが良いのではないかと思いました。

−具体的にはどのような発信や工夫をしていますか?

事業がはじまって間もない時にお友達登録をしてくださった方は約400人でしたが、令和4年度には約4,000人にまで増えています。お友達登録を増やすために、名刺サイズのカードに「いち早く情報提供できるのはこのLINEです。ぜひお友達登録を。」というメッセージを添えて、イベント会場で名産のキャベツと一緒に配っています。
そのお友達登録をされている方に対して、毎月アンケートを実施しています。アンケートに答えていただいた方の中から抽選で、地元の野菜や名産品をプレゼントしています。
通常、アンケートを実施することは時間的にも費用的にもとても大変なのですが、今は月1回LINEを通じてプレゼント企画をすることでアンケートを回収しているという形になっています。このアンケート結果は観光だけではなく、移住定住などの施策を行う上でのエビデンスになっています。

つくりっぱなしで発信しなかったり、発信し過ぎではファンも離れてしまうので、プッシュ発信の頻度もアンケートを取りました。「週1くらいで情報がほしい」という声を多くいただいたので、月1回の発信から頻度を増やして、新着情報やリマインド情報などコンスタントに発信するようにしました。LINEのブロック率などを分析してもブロック数も多くならずいい結果になっています。プッシュ型なので、積極的に発信してファンを獲得しており、ポイントは、コンスタントに発信することだと思います。

データ連携基盤を構築し住みやすいまちづくりを

−将来の展望を教えてください。

今回評価いただいた「防災」「観光」についてはしっかり使っていき、住民、観光客、事業者にも還元していきたいと思っています。そして村全体としてこの仕組みで、近隣自治体や全国の消費者の皆様と繋がっていくことが今後必要だと考えています。また、改善提案を取り入れながら、バージョンアップもしていきたいです。

スマートシティにおいては、「防災」と「観光」の分野に着手したにすぎません。データ連携基盤を構築して、データを共有できる仕組みを作っているので、次は住民向けのアプリを開発中です。今後、山間部で求められるオンライン診療や農家向けのスマート農業などの分野の拡大を目指しています。観光でアンケートを実施していく中で、「住みやすさ」はとても重要だと感じています。買い物や医療は生活において重要なことなので、そういったところをマイナンバーカードと連携させて嬬恋村のスマートシティを発展させていきたいと思っています。

参考URL

群馬県嬬恋村 公式LINEアカウント
https://page.line.me/213ngtbp

嬬恋村について

人口:9,498人(2023年6月時点)
面積:337.58 km²
嬬恋村は、群馬県西北部に位置し、2,000メートル級の山々の山麓に広がる高原にあり、夏は避暑地として、冬はウインタースポーツでにぎわいます。自然が豊かで、5つのスキー場や大小合わせて12カ所の温泉があり観光の村でもあります。
高原野菜の栽培も盛んで、高原キャベツは全国に出荷されています。

嬬恋村WEBサイト
https://www.vill.tsumagoi.gunma.jp/www/menu.html