防災DX!SNS投稿から貴重な現場情報を収集

地球温暖化の進展とともに多発化・激甚化する水害。近い将来起こると考えられている南海トラフ地震。災害だからと言って急な増員は難しい地方自治体では、限られた人員でいかに効率に情報を収集し、適切な災害対応が取れるかどうかが課題です。そんな中、防災DXをいち早く推し進めた地方自治体があります。

 

SNS投稿を、災害対応に欠かせない情報として活用!

豊田市では、災害発生時の市民の方々からの情報収集は基本的に電話で行い、職員が現場に行って、ビデオやスマホで撮った動画を市役所で見て状況確認をしています。しかし、実際に現場に行くのでは時間もかかるし、職員に大きな負荷がかかるという課題がありました。そんな中、内閣府に出向していた職員からの紹介で、AIがSNS上の被害に関する投稿を自動抽出して知らせるサービスがあると知り、トライアル期間を設けて導入ました。

 『Spectee Pro』の無料トライアル期間中、豊田市の山間部で土砂崩れが発生して、道路が一時通行止めになるほどの被害がありました。それを最初に覚知したのが『Spectee Pro』でした。道路管理者からの情報提供より早く市として覚知することができたのです。

被害状況の把握については、市民からの電話や職員が現場に行くというところに依存していた部分があり、それではなかなか拾いきれない場合がありました。トライアル期間において、SNSへ投稿されている被害情報の中には、写真付きで地点特定も可能な非常に重要な情報があることが分かったので導入に踏み切りました。


『Spectee Pro』は、株式会社スペクティが提供するAI防災・危機管理情報ソリューションで、SNSへの投稿を中心に、気象情報や交通状況などのビッグデータ解析を通じて、災害についての情報をリアルタイムで配信するソリューションです。

 

実際の『Spectee Pro』の活用シーン

『Spectee Pro』を被害情報等の必要な情報を迅速に把握するために活用しています。災害の初動期は、特に情報収集が困難であるということがよく言われているので、南海トラフの巨大地震をはじめとした災害時に、情報収集手段の一つとして、SNSの投稿を注視していきたいと考えています。他にも突発的な事件や事故が起きたときの情報収集、他の自治体の被害状況の把握のために活用しています。平常時は、ずっと画面を見ているということはありませんが、たとえば、雨雲が近づいているときに、特に音声を拾ったときには(※「荒木ゆい」による読み上げ)、パソコンの画面に行くようにして、どの地域でどれだけの雨が降っているのかを確認しています。読み上げはとても自然です。仕事中、スマートフォンに通知があっても逐次見ているわけにはいかないので、音声で簡潔に知らせてくれる機能はとてもありがたいです。

普段の表示は、愛知県で絞り込みをしたホーム画面です。豊田市に特に雨の被害がなくても、他市の様子を『Spectee Pro』を使って見ることもあります。また、検索機能を使って日時や場所を絞り込んで、他の都市では実際にどれくらい配信があるのか検索をしたり、過去の災害の振り返りに使ったりすることがあります。

 

実際の成果と今後の課題

隣県の長野県で大きな災害があったときに、職員や物資の派遣を行ったことがありました。長野県にこれから向かおうとしているときに、『Spectee Pro』を使って現地の概況をつかめたのはかなり役に立ちました。豊田市や愛知県に限定されずに、他の自治体の様子も見られるのは大きな意義があると感じています。また、千曲川が決壊する前から、大雨や川の増水等の情報に関して多くの投稿があり、災害発生前の段階からの活用についても考えるきっかけになりました。導入してからはAIが抽出したという付加価値が付いたことで、「SNSはどう?」という声が災害対策本部で飛び交うのが普通になり、SNSに対する課内の注目度が高まりました。以前は、SNSに対する不安感がありましたが、そういうものも大幅に軽減して活用に積極的になりました。導入せずに、防災関連の投稿の収集から真偽の判断までの業務を人海戦術でおこなっていたかと思うとぞっとします。SNS活用に対する意識が変わったということができると思います。

現在は、Spectee Proを活用した情報収集体制を構築し、運用中です。被害状況の把握方法を多角化すること、また市の方から被害情報を能動的に取りに行くことを目指して体制を構築しました。具体的には、SNSに投稿された情報をSpectee Proで確認し、管理職がさらなる情報収集すべきかどうかの意思決定をしたうえで、投稿者にコンタクトをとり、市の災害対策本部への電話を依頼します。これにより必要な情報をさらに詳細に得ることで、復旧の迅速化につなげる考えです。

 

今後の展望:将来的には情報収集の自動化や衛星写真の活用にも期待!

防災対策課としては、これまで防災行政無線1本だったところを、防災ラジオや登録制メールを導入するなどして情報伝達手段を多角化させた一方で、情報を受け付ける窓口を自動化できないかという話や、それこそ大きい話になるとドローンで物資を運ぶというようなことについても将来的にできたらなという思いがあります。また、豊田市は外国人が多いのですが、外国人に向けた災害情報の発信は難しいですし、反対に外国語でSNSに投稿されていてもこちらで把握できないのが現状です。外国人によるSNS投稿の整理や、登録制メールで災害時の情報も自動翻訳で配信できたりすると、きめ細やかな対応ができると考えています。AIと人工衛星を使って、衛星写真で発災前と発災後を比較し、ずれているところを解析して被害を迅速に把握し、さらに、土砂災害・浸水などが起きたときにどこまでの範囲で被害があったかというのがわかれば罹災証明発行などの事務に集中的に人員配分することができるので、そういうことも機会があればぜひ取り組みたいです。

 


 
株式会社Specteeについて

国内企業契約社数No.1、自治体契約数No.1のAI防災・危機管理ソリューション『Spectee Pro』を中心に、AI等の最先端の技術を活用したビッグデータ解析を通して、災害関連情報や企業のリスク情報などをいち早く提供する他、デジタルツイン技術による被害のシミュレーションや予測などを行っています。「危機を可視化する」をスローガンに、すべての人が安全で豊かな生活を送れる社会の創造を目指しています。

ホームページ:https://spectee.co.jp/