【#ホンネのDX】DX人材確保のために塩尻市がしたこと|塩尻市特任CCO 千葉憲子さん(2)

#ホンネのDX  3回連続でお届けする長野県塩尻市特任CCO千葉憲子さんとの対談。1回目では、働き方の選択肢を増やしていきたいという思いと、自身が2拠点で活動することを選んだ経緯を語った千葉さんでした。

今回は、そんな千葉さんが考える塩尻市がDX人材確保に成功した理由、またCCOとしてのお仕事について、具体的な内容を伺います。

ポイントは「リモート・副業・短期」

菅原:前回、自らの活動を通じて働き方を自分で選べる社会へ選択肢を増やしていきたい、またそれが実現できることを知って欲しい、という思いについて伺いました。
続いてDXについて伺っていきます。
千葉さんが現在のような働き方をしていることの前提として、オンラインツールであったりチャットツールやクラウドストレージがあってのことだと思います。現在塩尻市にリモートがメインでCCOに就任されていて、とても面白い取り組みなのですが、リモートならではの楽しさ、難しさ、ご苦労もあるのではないでしょうか。そういう部分に興味がある自治体関係者の方が多いと思いますのでお話しいただけたらと思います。

千葉CCO:塩尻市がリモートによってDX人材を確保したというお話をしたいと思います。
塩尻市のCXO※という仕組みなのですが、ある2つのポジションを募集したことから始まっているんです。
CHRO…人事の責任者と、CMO…マーケティング責任者の2名です。
人事戦略、これからの人の戦略を考えてもらうことや、もっと塩尻市を外に知ってもらうためのマーケティングについて、専門家に聞きたいけれどコストもかかるし市内には人材がいない、どうやって募集していこうかという時に、リモートで副業で短期・有期で募集した方が欲しい人材が来るのではということで募集をしたところ、実際そこに103名の募集があり、実に優秀な方が決まりました。
なぜこんなに素敵な人材が取れたのかと分析したところ、リモートで副業で短期だったことがモチベーションになったという理由からでした。

お2人とも今の仕事がすごく好きで手放したくはない、けれどやっぱり地域のことや、自分が持っているものをどこかに還元したいという思いを持っていて、でもきっかけがなかった、そういう時にリモート・副業・短期であれば今関われるのではないかということで募集されたそうなんです。
そのお2人がとてもよい結果を出されたので他のポジションも作ろうということになり、実は私、その103人の中から落選した落選組だったんですけど、そこから5人選ばれて別のポジションを用意してくださいました。塩尻市がさすがだなと思ったのはちゃんと人を見ていて、勿体ないから取っておこうと思ったらしいんです。次に何かに関わってもらろうということで呼んでいただきました。
今もリモートの取り組みは進んでいて、100人くらい常にリモート副業で関わって下さる方がいる状態になっています。

※塩尻市CXO:塩尻CxoLab。塩尻の魅力を高め、塩尻の課題を解決するため官民協働で走る実践型コミュニティ。

地方自治体がDX人材を確保するために

菅原:今のところにすごくポイントがあると思っていて、地方で何が一番欠けているかというと人材だし、それは自治体の人たちもわかっているんです。
でもクリエイティブな人材に来て活動して欲しい時に、今までの発想が抜けなくて先ほどのリモート・副業・有期の真逆をやるんですよね。まずは移動して来てください、専業でお願いします、長期で先が見えない、お給料もあまり…のように。
塩尻市のすごいところは、目的と成果のために自分達のやり方と手段を変えたということだと思います。
その前提にはWeb会議やネットワーク環境がある程度後押しをしたと思うので、この点を自治体関係者の方たちが理解していくといいのですが。

千葉CCO:そうですね。こういうことはそれこそ自治体の役所などでしかできないんじゃないかと言われていたこともありましたが、塩尻市はさらにそれを発展させて、塩尻市の普通の企業さん、中小企業さんとも同じようにマッチングする仕組みを役所の方々が整えて下さっています。
地元の中小企業さんなどに聞くと、人をひとり雇える余裕もないけれど、でも困っていて、困っているのが何かもわからないでいる。そこで、何回かに1回は現地に来て欲しいけれど基本的な打ち合わせはリモートで、という感じで進めていくと応募がたくさん来て、いい方々とマッチングしていくことが出来ています。
コロナでこれだけリモートが進んだからこそ、今、地域側としても取り入れるべきことなのかなと思いますね。

菅原:確かにそうですね。いきなりフルスペックでやっても受け入れられないということもありますし、そもそも何をしたいのかも分かっていない状況ですから、最初は軽い関わりから始めて本当にいい人であればその時には費用をかけてでも入ってもらうという選択肢も出て来る、選択肢が多様になっていきます。
専業で長期を否定するわけではなく、行政側も少し入口の敷居を下げれば最初の選択肢でタッチポイントを作れて、その中からさらにコミットしていく人が出てくる可能性もあるのに、地方自治体の政策は敷居が高くて跨げないことが多いですね。

千葉CCO:塩尻市のうまいところは、「出来ないです、わからないです、教えてください」から開示することで、一緒に作ってくださいという応募の仕方です。入ったメンバーは一緒に頭を動かして作っているのでもう中の人ぐらいに自分事化していくんです。副業が終わっても定期的に関わってくれたり、いわゆる関係人口というものがきれいに整っているので、弱みを見せることでこんなに人って巻き込まれていくものなんだなと感じています。

中と外を繋ぐCCOとしての役割

菅原:ちなみにコミュニケーションオフィサーというのはどういうお仕事をされているんですか?

千葉CCO:簡単に言うと中と外を繋ぐ人、ということで、塩尻市をもっと知ってもらうために塩尻市の方とイベントをしたり、塩尻市と関わりたい方のコミュニティのようなものを運営したり、あとは広報PRのようなことですね。塩尻市の取り組みを記事にしてもらったり、コンテストの応募などをさせてもらっています。

菅原:ある意味今の本業…本業というのももうないのかもしれませんが、ガイアックスさんでやっているような自分のスペシャリティを活かしながら、自分の故郷である長野県の中でその価値も発揮できる、お子さんも一緒に行ったり来たりできる、絵に描いたような感じですね。

千葉CCO:巻き込まれていったらいいところに収まったという感じで、本当にこれを目指して作り込んでいた、この仕事を取りに行こう、のようなことをしていた訳ではなくて、結果としてきちんと発信していれば近しいことは寄って来るんだなというのは感じています。

次回は、ワーケーションコンシェルジュとして広めていきたいこと

千葉憲子さんとの対談は次回が最終です。
次回は、千葉さん自身が考える幸せについて、またワーケーションコンシェルジュとして社会に広めたいことについてお伺いしていきます。

長野県塩尻市
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株式会社ガイアックス
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