#ホンネのDX 3回連続でお届けする磐梯町官民共創・複業・テレワーク審議会副会長 小澤綾子さんとの対談。1回目では、自分らしく生きる選択肢のある社会を作りたいと、自身が難病を抱える当事者として発信していくことを選んだ経緯を語った小澤さんでした。
今回は、そんな小澤さんが行うリモートワークを通じた社会参画の取り組みについて、具体的な内容を伺います。
ボタンひとつで会議に参加
菅原:前回、小澤さんは会社員でリモート勤務をされており、完全オンラインの磐梯町の審議会に参加していらっしゃると伺いました。移動に制約がある人や時間がかかってしまう人も、オンラインであれば参加できるので、今のリモートワークやオンラインツールの発展というのは、小澤さんの生活に与えている影響が大きいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
小澤副会長:おっしゃるとおり、リモートワークになってから、より私の活動が加速したという面があります。コロナで失速を感じてらっしゃる方も多いと思うんですけれども、難病者であり車いすに乗っている当事者としては、本当に社会参加できる機会が増えたなと思っています。今までは移動を伴うのであれば、体力的にも、物理的にもあきらめなきゃいけないなという場面も、ボタンひとつで出勤できたり、ボタンひとつでこのように会議に参加できるので、いろいろなところに顔を出しやすくなりました。
今までは、たとえばあるビルで会議をするとなると、まずはバリアフリーの確認から入るんですね。段差はないか、エレベーターはあるか、お手洗いも含めてハード面が車いすでも対応できるものになっているのか、というところから始まり、じゃあ行ける、行こう、となってもそこからもまたハードルが高くて。私は車いすに乗っているので、電車で移動したりバスで移動したりすると、駅員さんやバスのスタッフに手伝ってもらわなければいけません。そのための時間を考えると、Google検索で表示された時間の3倍はいつもみて移動しないと時間に間に合わなかったりするんですね。
そういった物理的なハードルを越えて、心理的なハードルを越えていくと、着いた時点ではもうけっこうボロボロです。
そういったことがあるので、本当に今、自宅から移動せずに違う場所に顔を出せたり、Zoomで行われる懇親会で多くの方々と交流ができたり、自宅にいながらいろいろな国の方々と仕事ができるのは助かります。審議会でも、子育て中のママさん、私のような車いすの方など、いろいろな属性の方々がいろいろな場所から参加されて、一緒に意見交換ができます。ひと昔前では考えつかなかったようなパラダイスが広がっております。
困りごとを解決するデジタルの可能性
菅原:僕は、ベビーカーを押すようになったときにわかったことがあるんです。横浜駅で乗り換えようとして、小澤さんのことを思い出しながら小澤さんと同じルートを歩いていたんですけれど、自分の足で歩いたら5分や10分で乗り換えられるところが30分近くかかったんですね。なるほどこれは、と思いました。エレベーターが混んでいると、ずっと待たなければならなかったり。
小澤副会長:そうなんですよ。
菅原:横浜駅のように多くの人が利用する場所は、エレベーターの台数ももう少し多いほうがいいのではないかと、本当にそう思います。僕は乗り換え検索機能をよく使うんですけども、足の速い人、普通の人、ゆっくりの人のように移動速度の設定ができますね。同じように、ベビーカーを押す人や車いすに乗る人、つまりエレベーターを使う人がどのくらいの時間で乗り換えができるかというのが表示されたらいいですね。
小澤副会長:いいですよね。いちおう車いすルート表示といった機能がついているものもあるんですけれど、駅の中にあるエレベーターのことまでは考慮されていないので。車いすルートもまだまだ利用する人が少ないからなのか、ちょっと精度がどうなんだろうなというところがあるので、これからの改善を心より期待します。トイレ問題も死活問題ですし。
菅原:たしかにトイレもそうですよね。僕も「トイレはここ」ってぱっと出るアプリがあったらすごくいいなと思っていて。
小澤副会長:そうなんです。トイレの話をすると長くなってしまうんですが、本当に車いす対応の多目的トイレは、使用する人に比べて個数がかなり少ないので、争奪戦なんですよね。授乳中のお母さんも使用したいし、車いすである私たちも使用したいし、一般の方も含めると本当に混んでいます。
今日は某デパートに行って、各階にいちおう多目的トイレがあったんですけれど、1階で行こうと思ったら使用中だったので別の階に行ったんですけれど、全部の階が空いていなくて。
菅原:それはたいへんでしたね。
小澤副会長:7階建てで7階全部まわって、もう一度1階に戻ってきたら「空いてた、よかった!」と。トイレは解決したい非常に大きな問題のひとつですね。
菅原:大切なことだと思います。
人の考え方が変わることでDXが進む
菅原:少し残念だなと思っているのは、今、リモートワークによっていろいろな人たちがもっと社会参画できるようになっているのが、コロナの結果だったということです。技術的にはもう数年前からできているのに、外出に困難を抱える人の視点でリモートワークを提案する人がけっこう少なかったんですね。
小澤副会長:リモートワークが今まで普及しなかったのは、やったことがなかったからというのが一番大きいんじゃないかなと思っています。たとえば障がいがある方がリモートワークを週に3回くらいするという話が出ても、それって本当にできるの、それで本当に働けるの、という疑問がありました。このコロナの世界になって、当たり前のようにリモートワークが行われるようになって、多くの人が体験したから「できるんだよね」というところにやっとなったんじゃないかなと思っています。
菅原:誰もが自分らしく生きられるための手段として、オンラインが使えるといいですね。小澤さんが副会長をされている審議会のような公の場がオンライン環境を整えて、子育て中のお母さんも、小澤さんのように外出に困難を抱えている人も参加する。これって僕、すごくいいなと思うんです。こういった事例をどんどん発信していきたいし、自治体の方々もこの番組を見ていると思うので、ご自身の自治体でもぜひそういう視点でオンライン化を進めていってほしいなと思いました。
小澤副会長:本当に、ぜひ進めていただきたいです。さっき菅原さんもおっしゃったように、テクノロジーは昔から用意はできていたと思うんですけれども、人の考え方が変わることで、もっともっとDXが進む、そして多様な人たちの社会参加が叶っていくのではないでしょうか。
菅原:まさにそうで、今、DXは技術の問題だと思われていますが、違うんですよね。技術はもうありふれていて、技術に関しては先進国なんですが、うまくユーザー本位で導入する思考や、そこを乗り越えるマインドが追い付いていない。そこを変えることが大切ですね。
小澤副会長:今日、この番組を見られている方は、ぜひマインドチェンジしていただいて、前例なきところにどんどんチャレンジをしていっていただきたいです。
次回は自分らしく生きる幸せについて
小澤綾子さんとの対談は次回が最終です。
次回は、自分らしく生きる幸せについて、互いの考察を述べていきます。