【特集~東京都の最新DXを徹底解剖!】その4~民間登用の人材の方から学ぶこと~

特集~東京都の最新DXを徹底解剖!

その4~民間登用の人材の方から学ぶこと~

自治体DX白書.comの編集委員会では、編集部の気になる自治体の皆様にお声がけをし、自治体におけるDXの最新事情や実際の取り組みを取材させていただいています。第一弾として、東京都のデジタルサービス局の方々にお話を伺いました。(全4回)

東京都デジタルサービス局
ネットワーク推進担当部長 芹沢孝明様(左)
サービス開発担当部長 荻原聡様(中央)
総務部人事・広報担当課長 米川美香子様(右)

 

Q:民間からの転職の方とのチーム作りはどのようにしていますか?

芹沢やってみたら、いい方向にしかいかないと思っています。民間から入ってきた人はコミュニケーションを大事にする、意志もある。新しい人を迎え入れてくれる文化が民間の方が多いと感じます。そういう人と触れると学ぶことが多い。人も流動化するなかで、いい方向に行くことが多いです。

荻原:我々は任期付きで採用された職員なので、自分の民間時代の経験やノウハウを都庁にすべて渡すつもりで来ています。私の持っている経験やノウハウをすべて職員の人に渡すことで、少しでもDXが進めば東京都に貢献できたと思っています。

芹沢:長年、民間の現場で培われてきた経験は、私たちが丸々コピーできるものではないです。ただ、それを都庁でやるならどうすればよいか考えさせられることが多くなりました。

Q: 雇用の制度の準備や、制度の変化はしているのでしょうか

芹沢:ビジョンと計画ができたところなので、これからはそれを推進する人材の確保と育成が課題です。 ちょうど今月、任期付きの管理職として「デジタルシフト推進担当課長」の採用を進めています。
https://www.digitalservice.metro.tokyo.lg.jp/saiyou/index.html

荻原:会計年度任用職員(非常勤職員)に、若い人では大学生と高校生がいます。なんで来たの?と聞くと、彼らも自分のスキルが、少しでも東京都で役に立てるのなら試してみたいと答えました。彼らは、ものすごいプログラマーです。週1~2回を都庁の職員としてスキルを発揮してもらっています。

米川:今回の採用のページ(上記)も、大学生と高校生が作った、ということが話題にもなりましたね。

芹沢:DXのための新しい雇用の仕組みは作っていないんです。既にある制度をフル活用しています。採用するために規則を変えたりルールを作ったりは特にしていません。

米川:採用の仕方はいろいろありますが、見ているのはその人のスキルなので、それに合わせて仕組みを使いわけている感じですね。

芹沢:任期付きもあるし、会計年度任用職員の雇用もあったし、4月1日付ではない任用もある。全部組み合わせているから多様性があるチームとなりました。

荻原:各局の依頼や悩みに合わせて、必要な人材を募集して採用をしています。デジタルに明るい人、ではなく、セキュリティの人材を募集するなど、細かいスキル設定をして採用を考えています。

芹沢:そういうことをするハードルが下がったのがありがたいですね。昔から禁止されていたわけではないですが、これまでも同じ制度はあったが、変化させることへのハードルが下がりました。スキルを明確化するなど、去年と今年の基準が変わっても許容されるようになってきたのです。完璧なものを求めて1ミリも動かないのではなく、不完全でもいいから作ってみてよくしていくんだという空気になってきました。

Q:みなさまにとってのDXとは何でしょうか。

荻原私の考えは、各局の垣根を超えることだと思います。データやサービス、プラットフォームで各局が連携し範囲を拡大するとともに、デジタル活用のレベルが可視化から最適化・自動化に高度化していく。それがDXのゴールです。まずは我々がいいなと思っているものを各局と一緒に考え、全体最適として見えるようにし、活用することがDXなのかもしれません。

芹沢:そうですねえ、DXはきっかけ、だと思います。私の世代は、年代ごとにその都度デジタルが現れてきた。ワープロ、ケータイ、スマホ、ウェアラブルと、徐々に技術が進化し、生活が変わるきっかけがありました。それが、仕事の中でも考えるきっかけができたのはDXのいいところだと思います。皆それぞれ、行政の仕事を一所懸命やっていますが、DXを掛け声に、もう一度仕事のやり方を見直したり、新しい手法を取り入れたりする共通の言葉が、デジタルトランスフォーメーションです。その目指すところは、都民サービスの向上と、都民生活の質の向上です。

米川私は、改善、だと思います。こうなればいいと思っていたものが、デジタルを使って変わっていく。難しく考える必要はなくて、ふだんから思っていたことが、変わるための力をもらえるのがDXだと思っています。

Q:記事を読んでいる自治体関係者皆さんにメッセージなどをいただけますか?

芹沢:これまで、社会が幾多の困難を乗り越え、文明や生活を発展させることができたのは、絵図や文字、映像といったデジタル・コミュニケーション技術の進歩だけでなく、実験を行い、試行錯誤し、失敗を含めた取組そのものの知見を惜しみなく共有してきたからだと思います。こうした知見を蓄積するためには、少しはみ出た取り組み、いわばファーストペンギンが必要です。これまでの業務を継承しつつ、新しいことへ挑戦し、社会の知見として共有する(この自治体DX白書.comもその一つだと思いますが)ために、ぜひ情報交換していきましょう。

 


最終回は、採用・雇用の話からチーム作りについて、そしてご自身にとってDXとは何かを語っていただきました。ありがとうございました。(全4回おわり)