自治体DX実務編③議員は住民の代表者

自治体DX実務編③議員は住民の代表者

自治体DXを推進する上での議会の役割

意識変革で忘れてはならないのが、議員の存在です。DXを推進する上で、予算、条例、制度、事業等あらゆる部分で議会の判断を仰ぐことがあるからです。

議会が総体として、DXに前向きか後ろ向きかによって、DXの進み方は大なり小なりの影響を受けます。したがって、議員の理解を得るための取り組みも重要となってきます。

実務の視点:議会の自発性に委ねるか否か

政府も自治体DXの推進に力を入れているので、議会が自発的に講師を呼んで勉強会を開催することも増えてきています。このような議会の自発的な取り組みは本来あるべき姿です。

一方で、行政側からのニーズで議会にDXについての理解を深めてほしいという場合もあります。このような場合は、強制は出来ませんが、行政側から議会に働きかける方法もあります。

例えば、私が経験した事例では、行政側で勉強会を実施する際に、議会にもお声かけし、任意で議員が参加するという方法をとっている自治体がいくつかありました。意外と参加率も高かったのが印象的でした。

 

実務の注意点:議会は住民の代表者

議会対応の難しさは、自治体によって首長と議会の関係性にばらつきがあることです。首長と議会の関係性が良い場合は、首長が提案することがほぼなんでも通ってしまう一方で、関係性が悪い場合は理論的に提案したとしても、批判的に捉えられてしまうことが、DXに限らず、往々にしてあります。

また、議員それぞれの考え方も多種多様であり、DXに対するイメージや考えも肯定的な議員から否定的な議員まで様々です。各人のデジタルリテラシーにもかなりばらつきがあります。これは住民の合わせ鏡でもあります。

さらに、議会内部の問題として、多くの議員がDXを推進したいと考えていても、影響力のある議員がその歯止めになってしまっている場合もあります。

ただ、どのような場合でもあっても、議員が住民の代表者であるという事実は不変です。したがって、大半の議員にDX推進の理解を頂くことは、住民の理解を得ていくプロセスと考え、議会対応は行っていくことが大切です。

また、デジタル技術の活用には思想は無関係であるということを意識してもらうことも重要です。あくまでも住民の幸せのために、手段としてのデジタル技術の活用があるだけです。

 

実際の事例:議会としての勉強会(三重県議会)

三重県議会では、知事部局がDX推進を強く打ち出したことを契機に、毎年行っている三重県議会議員勉強会を、「自治体におけるDXの推進について」と題して開催しました。

議会主催なので全ての議員が参加すると同時に、議員のデジタルリテラシーの向上のために、あえてオンライン開催にするという徹底ぶりでした。党派を問わず様々な質疑が行われ、全ての議員がDXについての共通認識を持ったという点で、非常に有効な取り組みです。

他にも、宮城県議会、防府市議会等では、DXに関連する委員会の正式な場で、講師を参考人等で招聘して、委員が学ぶ機会を設ける等、議会主導の取り組みも増えています。

たいていの議会で、講演会等の後は、本会議等でのDXの質問が増える傾向にあるようです。

 

雑観:議会が変わると行政も変わらざるを得ない

行政だけでなく、議会もDXをする余地が多分にあります。また、議会が率先してDXの取り組みをする自治体は行政も変わりやすい傾向があります。例えば、ペーパレス等の取り組みも議会が実施すると、行政も合わせなければならなくなるためです(その逆は必ずしも絶対的ではない)。

議員の中には、食わず嫌いな人も結構います。しかし、DXの本質は、誰でもがデジタル技術の恩恵を受けられることであり、UI・UXの良い対応をすれば、むしろ高齢の議員であってもサクサクと活用していきます。

議員の中には食わず嫌いな人も少なからずいますので、一度DX弁当をご賞味あれ!

「自治体DX実務編②一般職員のマインドセットの変革」はこちら
「自治体DX実務編④全職員のスキルセット」はこちら
菅原直敏(自治体DX白書共同編集委員長/磐梯町CDO)