自治体DXお悩み相談〜オンライン申請における本人確認とキャッシュレス決済

住民本位のサービスデザインを設計

【質問】

市民から最も多い要望で証明書類のオンライン申請化があります。しかし、本人確認やキャッシュレス決済などのハードルが高いです。実現に向けてどのように考えていますか?

【答え】

オンライン申請の検討の際、多くの人たちは申請の業務プロセスをICT化することに目が行きがちです。しかし、最も重要なことはその前提条件を整備することだと私は考えています。

まず自治体側の前提条件として、職員のリテラシーの向上、情報通信インフラの整備等が挙げられます。次に、住民側の前提条件として、住民のリテラシーの向上、マイナンバーカードの取得、情報通信端末の保有等が挙げられます。その上で、住民だけでなく職員にとってもUI・UXの良いシステムを導入する必要があります。さらに、UI・UX向上のためには、業務フロー自体を根本的に見直すことも検討できます。

例えば、磐梯町で現在真剣に検討しているのは、手数料を免除することで、決済フローのICT化自体をなくしてしまおうということです。これにより、申請者のUI・UXは格段に上がります。磐梯町は自治体の規模が極めて小さいので、アナログにおいても決済事務を無くした方が、金銭管理や業務負担を考慮すると、費用対効果が良いと試算されています。なお、参考までに平成29年度の磐梯町の主要な申請業務の件数は5,000件強で、その手数料収入の総額は200万円弱となっています。

したがって、オンライン申請の方を手数料免除にして、アナログ申請からオンライン申請に町民を誘導していく政策としてデザインすることも可能です。大切なことは申請業務単体で考えるのではなく、行政全体において、いかに住民本位のサービスデザインをできるかだと考えます。

 

回答者:菅原直敏(自治体DX白書.com共同編集長/磐梯町CDO(最高デジタル責任者))