編集委員長対談~自治体DX白書とは(前編)
2021年7月7日
編集委員長対談~自治体DX白書.comとは(前編)
今回は、このサイトの編集責任を持つ、株式会社PdC(パブリック・ドット・カンパニー)の菅原と、株式会社電通の西嶌(にしじま)にて、サイト設立のきっかけや思いを語りました。この自治体DX白書.comの設立に至る背景や思いを皆様にお伝えできればと思います。
自治体DX白書.comを作ったきっかけ
西嶌:皆さんこんにちは。「自治体DX白書」共同編集委員長の西嶌です。
菅原:同じく共同編集委員長の菅原です。よろしくお願いいたします。
菅原:自治体DX白書を作ったきっかけですが、私は、福島県の磐梯町でCDO(最高デジタル責任者)をやっています。その中で感じていたのは、自治体の皆さんが直面する「課題」は比較的似ているものが多いため、その解決方法を世の中にオープンにしてみんなで共有していければと思いました。ただ、やはり独力でやるには限界があり、たまたま共通の知人を通じて知り合った皆さんとご一緒させていただきました。
西嶌:僕は、DXという言葉が先行して流行っていることに少し違和感を感じています。「DX」という言葉が技術や製品などの事業主体になっており、生活者やユーザー視点の使い勝手が抜けているのではないか、と。この「DX」を、優しく、わかりやすくできないかな?と考えていた時、菅原さんとつながり、一緒に自治体DX白書.comを作る事となりました。
菅原:DXに関して違和感、とおっしゃっていましたが、僕も同じことを思っていました。実は僕も、DXという言葉にこだわりはないんです。元々僕はソーシャルワーカーですので、デジタル技術を活用して人々をエンパワーメントする、つまり、いろんな人が取り残されず「手段」としてデジタル技術が使われていけばいいと思っています。しかし、最近は「DX」というデジタルの技術の部分のみが、少し前に行き過ぎている気がしますね。
どんな社会を作っていきたいか?
菅原:西嶌さんは、どんな社会を作っていきたいですか?
西嶌:このサイトのテーマである「誰もが取り残されない共生社会」という部分、非常に共感しています。多数派だけが幸せになるのではなく、誰にとっても、便利で効率的な、取り残されない行政サービスがある社会、というのは実現したいですね。僕は、若いころから今まで世界中旅をしており、結果、視点が俯瞰的になりました。様々な世界や多様性のある文化を見てきていて、誰もが受け入れられる、つまり「個々の個性を尊重しつつ、自由な権利を享受できる」というのが理想の社会ですね。
菅原:私も20歳の時、大学を休学して世界を回ったんですよ。そこで感じたことは、もっと多様でいいのではないか?という事です。僕は「自分らしく生きたい」という意思が強く、それはみな持っていると思います。その「自分らしさ」を最大限発揮できる、つまり「誰もが自分らしく生きる共生社会」を作っていきたいと思っています。その手段としてデジタル技術は使えるのではないか、と思っています。
DXのエピソード
菅原:西嶌さんが手がけた中でDXのエピソードはありますか?
西嶌:僕が以前に手がけた仕事の中ですが、ボツワナ共和国にてテレビの放送波を使った電子政府をサービス導入したことです。アフリカって発展途上国のイメージがあると思うのですが、実はとても技術は進歩しています。いわゆる「リープフロッグ現象」(※編集部注>道路、電気など基礎インフラが未整備な地域が、最先端技術の導入により一気に発展する現象)が起こっており、一部では我々よりも技術が先行しています。そのプロジェクトは、本質的には日本でやってる仕事と変わらず、その国で困っている課題は何なのか、という事を徹底的に調査し、課題解決のサービスを提供するという仕事でした。なぜインターネットではなくテレビの放送波を使ったかというと、デジタルデバイドの解消です。アフリカの田舎は、まだまだネットが繋がらない地域が多々あるのですが、テレビはほぼすべての村や集落に普及しています。そのため、テレビの放送波を使いました。首都に住み、高学歴で教育を受けている人たちは皆ネット環境を持っていますが、そうではない地方に住んでいる人はまだまだ普及前といった感じです。具体的なサービスとしては、テレビの「d」リボンを使い、データ放送技術を活用しながら、政府情報や緊急事態の情報などを住民に伝えています。これは面白い経験でしたね。
菅原:なるほど。日本でもそれはありますね。山間部とかはそこまでインフラ維持・整備などができないからどうすればよいか、という相談を自治体からされることもあります。私のDXのエピソードですが、例えば今日、私がどういう日を過ごしたかというと、朝から自分の会社の経営会議、その後栃木県、その次は、福島県、愛媛県。これはオフラインだと今まで1週間かかっていたものが、日本中、世界中の仕事を1日でできるようになりました。これってすごいことですよね。
西嶌:DX化は功罪両方ともあると思います。コロナが劇的に変えた一つは「働き方」だと思います。良くとらえれば、国や、場所や、時間を問わず「デジタル」というインフラの上でお互いに仕事をするようになりましたね。
菅原:そうですね。僕は、年間100回ぐらい講演します。北は北海道から南は沖縄まで、今年はニューヨークまで、それをオンラインでできるのです。そして、オンラインでも非常に好意的に受け止めてもらっています。ただ、功罪の「罪」の部分があるとすれば、こういう働きかけは自己管理とかがしっかりできないと難しいかもしれませんね。
西嶌:仕事で言うと、結局はその結果論と思っています。つまり、やるべきタスクに対して最良の結果を出す。その過程の手法は問わない、という形です。なので、逆に僕は、自由に時間を使える分、集中して仕事に取り組むこともできるかな、とは思っています。
菅原:個人の質が問われるような時代になってきましたね。今までの日本的な働き方は、時間を使うことで対価としてお金が支払われたので生産性が下がっていたと思いますが、成果というゴールがあり、そこに至る過程は問わない、という形であれば空いた時間を個人の裁量で自由に使えますね。
西嶌:働き方のDXが進み、自分で自由に時間を使える時代になりました。
菅原:それはDXのいい側面ですね。
編集委員長対談の後編は、こちら。