Digi田甲子園 受賞事例特集
自治体DX白書編集委員会は、内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局が主催した、令和4年度夏のDigi田甲子園で実装部門(市)ベスト4を受賞した取り組みを北見市市民環境部窓口課 吉田和宏さまにインタビューをさせていただきました!
書かないワンストップ窓口とは?
北見市では転居や婚姻など、ライフイベントに付随して発生する様々な手続きについて、カウンターを移動することなくその場で手続きが終わる「ワンストップ窓口」と、住民の書く手間を省略する「書かない窓口」を実施しています。これらを組み合わせた「書かないワンストップ窓口」を実現するため、役所の対面窓口業務を、業務ノウハウを搭載したシステムで支援する仕組み(窓口支援システム)を構築しました。
窓口支援システムは「書かない」を実現できるシステムになっていますが、「書かない」に重きを置いているわけではなく、住民も職員も楽になるワンストップサービスを重視しています。
例えば転居の手続きの場合であれば、転居に付随して「国保」「児童手当」「医療費助成」「転校」といった手続きをシステムが自動判定して、その場で受け付けする「ワンストップ窓口」となっています。住民は申請書等に署名するだけで良いので「書かない窓口」という表現をしています。窓口で受け付けの時に使用している帳票類の大部分は、システムから印刷可能で、書かなくても手続きができるようになっています。
デジ田メニューブック「書かないワンストップ窓口」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/menubook/2022_summer/0001.html
ー導入のきっかけや背景を教えてください
2012年に「新人職員が市役所窓口を利用してみたら実験」、いわゆる体験調査を実施しました。職員が住民になりきり、利用者目線で住民票などの証明書を取ってみた結果、申請書を何枚も書く必要がある、申請書の記載方法も住民票の内容もわからず職員に尋ねるなど、住民にはわかりにくいものが多くあることがわかりました。また、職員側も住民へ申請書の記載方法を何度も伝えたり、手書きされた申請書を修正したりと、決して自身も業務効率が良いとは言えないということがわかりました。
そこでまず、アナログ的な業務改善に取り組みました。何度も書かないようにするために証明交付申請書の一本化を行ったり、インフォメーションサインを変更したり、ホームページをわかりやすくしたり、各種申請書など様式の統一、手続き案内書の作り直しなどをできることから始めました。2015年から地元企業と協力してシステムも構築していき、2016年10月に窓口支援システムを導入しました。導入後も少しずつ改善しながら、ワンストップ対象とする手続きを増やし、手続きに訪れた方からは、「とても便利で驚いた。」という声をいただくことが増えました。例えば、お子様がいらっしゃる世帯の転入手続きでは、児童手当や転校の手続きなどをまとめて30分くらいで完了できるようになっています。住民が課を回らなくなったことで、職員もカウンターで応対する工数が減り、職員の業務効率化にも繋がりました。
職員の体験調査により住民視点で窓口改革
ー体験調査でどんなことが明らかになりましたか?
この体験調査は、実際手続きを行う時に住民がライフイベントを起点としてどのように庁内を移動し、どう手続きが繋がっていて、どれくらいの時間がかかるのかを職員がまず理解することで、課題を発見し共有するために行います。
現在、体験調査を多くの自治体で行っていますが、転入手続きの場合、手続き完了まで2時間半~3時間ほどかかってしまうことが多いです。住民側の手続きが大変なことだということを、体験調査をして初めて知ったということもよく耳にします。体験した職員からは、カウンターを移動するたびに何回も同じことを話す、同じことを書く、待ち時間も多く無駄が多いという声が多くありました。
北見市でもこの体験調査を通して、職員側から見えている景色と住民側から見えている景色にギャップがあることがわかりました。ただ、このギャップを解消しようとして窓口にシステムを導入しただけではうまくいきません。このように課題を洗い出し、その課題をの解決方法を考え抜いたことで、目的にあったシステムを導入することができたと思います。
ー導入にあたっての職員の反応はどうでしたか?
システムを導入することで、現状の業務がどのくらい楽になるかという話をしても、新しい仕事に慣れるのには時間がかかるので、現状維持がいいという声も多くありました。これは自治体に限らずどの職場においてもあることだと思いますが、北見市も例外ではありませんでした。
そこで、まずできるとこからやってみる「スモールスタート」で始めましたが、上手くいかなかったら戻してもよいという代替策も用意しながら進めていきました。システムを活用して業務を行っていくことで、それを見ている周りの職員やシステムに否定的な方も徐々に意識が変わっていきました。もし上手くいかなければ戻ることができるという安心感を持ってもらうことで、システムを活用する範囲を少しずつ広げていきました。
業務改革というのは、ボトムアップ、トップダウンのどちらかだけで進めるのは難しく、この両方が同時に作用するときに成功すると思います。この取組みを行う時も市長が「職員がしっかりと考えてくれたことだから」ということでトップの理解と意思決定があったことが、導入が進んでいったポイントだと思います。
ー将来の展望やシステムの活用を教えてください
全国的に電子申請が普及してきていますが、それですべての手続きができるわけではありません。電子申請は場所や時間を問わずどこでも手続きができ、デジタルの恩恵を広く与えることができます。その一方で、実際に窓口に来られる住民の方にも手続きが簡単に終わるようなデジタルの恩恵を与えられる社会を創っていくことで、「誰一人取り残されないデジタル社会」ができていくと考えています。
システムは道具の一つです。必ずしもシステムを導入すべきというわけではなく、業務の見直しの中で必要なシステムが導入されればいいと考えて
参考URL
総務省 令和2年度 地方公共団体における今後の人材育成の方策に関する研究会
北見市役所の窓口改善/ICT活用とBPRの取り組み
https://www.soumu.go.jp/main_content/000717141.pdf
北見市について
人口:112,197人(2023年6月時点)
面積:1427.41 km²
北見市は、北海道の東部に位置しており、オホーツク圏最大の都市です。商工業・サービス業の中核となる「北見」、美しい農村景観を有する「端野」、農業と漁業が発展する「常呂」、おんねゆ温泉を拠点とした観光の「留辺蘂」の4つの地域が一つになった北海道で一番面積が広い自治体です。自然豊かな地域で、農産物では生産量日本一の玉ねぎや白花豆、海産物ではホタテ漁も盛んです。またカーリングの街でもあり、日本最大規模の通年型カーリングホールを有しています。
北見市WEBサイト
https://www.city.kitami.lg.jp/
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