#ホンネのDX 今回は三重県最高デジタル責任者(CDO)田中淳一さんとの対談です。
田中さんはこの4月より三重県の最高デジタル責任者(CDO)に就任され、デジタル社会推進局長も兼任されています。
それ以前には政府のアドバイザーや、自治体の地方創生にも尽力されてきたキャリアをお持ちです。
また、起業家でもあり、若い頃からベンチャー企業の経営にも関わってこられたという一面も持っています。
そんな田中さんに、三重県のCDO就任に至った経緯や、自治体のDX推進を通じて叶えたい未来についてホンネを伺いました。
キャリアを活かして地域の役に立ちたい
菅原:みなさんこんにちは。自治体DX白書共同編集委員長の菅原直敏です。
今日はゲストに田中淳一さんをお迎え致しまして色々とお話をお伺いできたらと思います。
早速ですが、私から田中さんのご紹介をさせていただきたいと思いますので宜しくお願い致します。
まず1点目は、三重県の最高デジタル責任者、いわゆるCDO、チーフデジタルオフィサーを今年の4月より務められていますが、全国的にも珍しいのは専業のCDOとして三重県に引っ越してコミットをされているというところで、先進的な三重県の取り組みをリーダーとして引っ張ってらっしゃいます。
それだけではなく、元々政府の色々なアドバイザーであったりエバンジェリストもされていて、その他長野県の川上村という人口4000人くらいの小さな村でも地方創生の様々な取り組みをされているということで、本当に小さな自治体から県レベルの大きな自治体、さらには政府のような大きなところまで色々な公に関わってこられた、という実績を持っていらっしゃる方です。
そして2点目は、こういった公の実績以前にはもともと起業家をされてきたということで、若いときから、若いというのは本当に若い20代の時から起業、アントレプレナーといったらよろしいんでしょうか、そういった起業の世界に身を置かれていて、色々なベンチャー企業の取締役や経営にも関わってこられたという、その分野においてもかなり一級の取り組みをされてきたという部分がございます。
そして、ここまでくると自治体DX白書に参加される方たちには、まぁよくあるよね、というお話なのですが、田中さんは違うんです。ここからがすごいんです。皆さんご存じの方もいらっしゃるかと思いますが「恋するフォーチュンクッキー」を、作詞作曲したわけではないのですが、各自治体である時から「自治体版恋するフォーチュンクッキー」のような取り組みがフューチャーされていたことがありまして、私の住んでいる神奈川県も黒岩知事などが参加しながら結構盛り上がっていましたが、実はあれの仕掛人ということなんです。もともとは佐賀県でやっていたものが神奈川・鳥取・富山ですとか、色々なところで横展開をされるという、まさにこういうところとは今までの起業の実績であるとか、公の関わりの中の融合したところから生まれたのかなと思ったりもします。そういった、視聴者の皆さんの中でもよくご存じな取り組みを仕掛けてこられた方でもございます。
本当に今日は多才な田中さんをお迎えさせていただいております。自己紹介で補足がありましたらお願いします。
田中CDO:はじめまして。三重県の最高デジタル責任者をやっております田中と申します。宜しくお願い致します。
まず、私自身のプロフィールという意味では先ほどご案内がありましたように、デジタルの領域、こちらをこの20年以上やってきておりまして、プラス、コミュニケーションの領域、広報PRや渉外なども含めてそういったところをまた同じように20年くらいです。そして、この10年くらいはずっと地方創生にも関わっているというところです。
ですのでデジタルとコミュニケーションと、それから地方創生をかけあわせて、様々な地域のお役に立てればということで活動してきたわけなのですが、この4月からは、昨年にCDOの公募があり、そちらに応募させていただきまして、選んでいただいてこのようにお仕事させていただいている、このようなプロフィールになっています。
菅原:デジタルとコミュニケーションと地方創生を掛け算できる人材って日本ではそんなに多くないと思うのですが。
田中CDO:そうでしょうか?
菅原:ある意味最強の人材を三重県は配置したと思っています。
ちなみに公募で出たという話なのですが、何人ぐらいの方がCDOに応募されたんですか?
田中CDO:240人強くらいだったと思います。242人でしたか…うろ覚えですけど。
菅原:ということは240分の1ということですよね。
田中CDO:選ばれるのは一人なのでそういうことになりますけど、あんまりオーバーな感じではないと思います。
菅原:いや、だって240分の1とかでしたら東大入るよりも、甲子園出るよりも難しいですよ、母数から考えたら。すごいことですよね。僕は自分が240倍の何かに出すって言ったらその時点で逃げちゃうかもしれないです。まあ結果的に240人いたっていうのがわかったということだ思うんですけれども。
田中CDO:そうですね、最初からそう聞いていたら私も応募しなかったかもしれません。
菅原:私も自治体側でそういう審査や人選に関わったことがあるのですが、今自治体が募集をすると本当にすごい人ばかり集まるんです。もちろん絶対数フィルターがかかってしまう人はいるんですけれども。
私ある自治体でそういうデジタルコーディネイターを選定する最終委員をやったことがあるのですが、えーっ、こんな人たちが来るんだ、と。しかも自治体の人たちはそのすごさをあんまり実感してないのか、うーんうーん、みたいな感じなんですよ。だから逆に言うとそこで選ばれた方と言うのは、なにかその三重県の人たちの心をつかむそういう特長が、先ほどの話も含めてあったんだろうという風に思っております。
田中CDO:三重県のCDOのお話だったから応募してみようと思ったところはやっぱりありました。もともと2015年から2018年くらいに、三重県の少子化対策のお仕事に携わらせていただいた経験がありまして、その時に偶然お仕事の関係で三重県じゅうを回らせていただいたことがあったんです。この時に三重県って本当にいいところだなという印象が自分の中ですごく強烈に残っていたということもありまして、そういった意味で公募の話を聞いた時に応募してみようと思えたというのはあります。
菅原:なるほど、そういう経緯があるんですね。確かにそうやって回ってみていい思い出があると、そこでもうちょっと関わってみようと思うのは結構自然だなと思います。
テクノロジーと文化的課題を両輪で回していくこと
菅原:田中さんの経歴を拝見していてそれの説明だけでも1時間2時間かかってしまうくらいのところを、先ほどシンプルにデジタルとコミュニケーションとそして地方創生のようにまとめて下さったのですが、やはり地方創生の分野に行った理由だとか、そういった部分を掛け合わせているというのは、目指す世界観や何か思いというものがきっとあるんだろうなと思っているんです。なのでその辺りの、田中さんが目指している世界観や将来像のようなものを自由にお聞かせいただけたらと思うのですが。
田中CDO:まず、私が目指すというと少しおこがましいのですが、今この現代というのは、誰もがデジタル時代をすでにもう生きていると思うんですね。
そのデジタル時代というのはつまりいわゆる第四次産業革命に関連したような様々な新しいテクノロジーとか、あるいは新しい概念によって社会がどんどん進化していっているというようなことだと思いますし、またその新しいテクノロジーの中の大部分はデジタルに関連したものが今社会をどんどん進化させていっていると思うんですけれども、それは皆さんもスマホを持たれていたりだとか、あるいはコンピューターを使われていたりとか、それぞれのパーソナルなデバイスというのはあると思うのですが、さらにそういったものを活用して社会全体をアップデートしていこうというような流れがあると思うんです。
そういったテクノロジーを社会実装をしていく、新しいテクノロジーや概念を社会実装していく時に、同時に地域の抱えている文化的な課題を解決していくということをすごく意識して取り組んでいく必要があるんだろうなという風に感じています。
それは例えばですが、三重県もそうでありますが人口減少を迎えている地域、東京神奈川以外の地域は殆どそういう状態になっていると思いますけれども、人口減少の中でももう少し分解してみますと、特にやはり若い人、あるいは女性が流出して戻ってきていない、こういう課題が大きい地域が多いですので、そういった観点で考えると若い人と女性が地域からいなくなって帰ってきていないわけですから、残っているのは比較的私なんかも含むだと思いますが、40代以上あるいは50代以上男性が中心となった社会を作っていっている、これが実情だと思うんです。ですので、男性中心の、しかも中高年の男性中心の社会、あるいはその意思決定機関だけで新しいテクノロジーの社会実装、新しい概念の社会実装をやっていこうとすると、どんどん中高年の男性中心の社会が継続されていく、こういうことになりかねないと思っておりまして、そうすると、いつまでたっても若い人も女性も帰ってこない。
ですから若い人や女性にどうやったらその地域が魅力的に映るかといった時に、新しいテクノロジーや概念の社会実装とともに、その地域の文化的な課題を同時に解決していく、それはジェンダー平等であるとか、あるいはダイバーシティ&インクルージョンであるとか、そういったことが前提になっていくと思うんです。こういう今申し上げたようなテクノロジーと文化的課題というものが両方で、両輪で回してくことが非常に重要なんじゃないというのが私の目指すべき世界観ではあります。
平時からポリシーを高めておくことの大切さ
菅原:なんとなく人の属性だとか世代で見るとすごくわかりやすいなと思ったのと、確かに、今スマートシティとかDXとか色んな話をしているのですが、大切なことは手段ではないですか。その手段を決定する人たちの構成が先ほど言ったダイバーシティ&インクルージョンでなければ、当然そうではない人たちの決定による社会がアップデートされて強化・最適化されていくということが、今すごくすっときました。
そう考えると確かにその前提としてはそこの決定だとかプロセスにおいて、もっとダイバーシティ&インクルージョンが実装されていかないといけないですよね。
田中CDO:私は三重県のCDOになる前に、色々な地域のジェンダー平等などにも携わってきたのですが、その時に専門家の皆さんから色々教えていただいたことの一つに、例えば震災が起きた、災害が起きた時に、ジェンダー平等が実現できてない社会で災害が起きると、どうなるのかというような話がありまして、そうすると、やはり被災してすごい大変な状況の中でみんなで助け合ってなんとかしのいでいくわけですけれども、トイレのあり方一つだとか、いつの間にか女性だけがずーっと立って、炊事をやっているだとか、あるいは生理用品の問題だとか、色々な課題が起きるわけなのですが、意思決定の機関がほぼすべて男性でやっていると、やはり女性が被災したその地域で男性と同じように暮らしやすさを享受することが実現できないということが、実際に例えば東日本大震災などでも露呈したという話もお伺いしまして、緊急時には特にそういうものが出てくるなというような印象はありますね。
ですから平時からいかにしてジェンダー平等ですとか、あるいはダイバーシティ&インクルージョンというポリシーを高めていく必要があるのかというようなことをすごく強く感じさせられたお話だったんですけども。
菅原:確かに常に相手の立場を考えるということは当然なのですが、とはいってもやはり属性や経験から生まれてくるものには勝てないところはあって、そう考えますとどんな会議体でも、組織でも、議会であっても、男性だけだと限界はあるし、割合なんでしょうね。私も田中さんとすごく世代が近いんですけれども中高年の男子じゃないですか、こういう人間も絶対数はいてもいいと思うのだけれども、この人たちばっかりじゃダメですよね。割合かなというのがあって、今お伺いしていて、その多様性をもっと担保していく必要があるのかなと思いました。
次回は三重県CDOとしての取り組みについて
田中淳一さんとの対談は次回に続きます。
次回は、三重県のCDOとして地域のために取り組んできたデジタル変革について伺います。
三重県
https://www.pref.mie.lg.jp/
三重県デジタル社会推進局
https://www.pref.mie.lg.jp/D1DIGITAL/index.htm