【#ホンネのDX】行政手続きの手軽さが必要|NPO法人Social Change Agency代表理事 横山北斗さん(2)

#ホンネのDX 3回連続でお届けするNPO法人Social Change Agency代表理事 横山北斗さんとの対談。1回目では、必要な人に届くよう支援を網の目のように張り巡らせたいと、自身が広い意味でのソーシャルワークの活動を選んだ経緯を語った横山さんでした。

今回は、そんな横山さんが行うソーシャルワーカーとしての取り組みについて、具体的な内容を伺います。

支援が必要な人ほど手続きが難しい矛盾

菅原:前回、医療ソーシャルワーカーとしての経験で公的な支援から抜け落ちている方々が多くいるという気付きがあったことや、コンビニみたいな生活の動線で一番身近なところにもソーシャルワーカーがいたらいいんじゃないか、そういったさまざまな接点の一つとして、デジタル技術なども要素として使えるのではないかというお話を伺いました。たとえばコンビニなど、いろいろな動線にソーシャルワーカーをすべて配置できるかというと、おそらくマンパワーの問題でやっていけないし、一方で、制度からもれている人が目の前にいる。ここからポスト申請主義のお話の原型が出来上がってきたと思うのですが、そのあたりを掘り下げてお話しいただいてもよろしいですか。

横山代表理事:はい。国は、社会保障制度をセーフティネットであると言うにも関わらず、制度や支援を必要としている人に対して申請のプロセスをひとりでクリアすることを求める。これが強烈な矛盾だと感じています。制度はあるけれど、使うためのハードルを自力で乗り越えていかなければならないというのはおかしいのではないかと。

菅原:わかります。他の国の制度を全部知っているわけではないですけれど、日本の社会保障制度って極めて精緻に作られてはいるんですが、それが故に、難しいんですよ。正直な話、社会福祉士という国家資格ができて、その中に社会保障制度という科目ができてしまうほど難しいです。助けを求めている一般の人がその制度を理解して適切な制度を選ぶということ自体がまず難しいでしょうし、もう一つは、まさに申請をするというプロセスそのものが一大業務というか、かなり高度な能力を必要とする作業ですよね。

横山代表理事:おっしゃるとおりだと思います。

菅原:いろいろなことができる人、しかも時間にも余裕がある人は申請できるけれど、本当にその制度を必要とする人にはその力と時間の余裕がないことが多いという矛盾があります。

横山代表理事:そのような矛盾に対して、情報入手については千葉市が今年1月からプッシュ型の行政サービスとして、市民ひとりひとりに合わせた個別化された制度情報等をLINEで届けています。これは、情報を自分で探す、自分が使えるのかどうかを理解することをデジタルの力でサポートするよい例だと思います。

菅原:まさにその視点ですよね。突き詰めていくと、デジタル技術そのものというよりも、デジタル技術とすごく親和性があるユーザーインターフェースの話ですね。それに加えてユーザー体験というか、情報入手や手続きのフローがいかに負荷なく進められるか。そうするとアナログでは実現が難しくて、やっぱりデジタル技術を活用してやっていくのが重要なのかなと思います。

逆に言うと、民間企業などは利益が目的だからそういうことをやるわけです。私がいつも例に出すのが、消費者金融なんです。ある人が貧困に落ちそうになったとき、本来行くべきは、消費者金融の前に行政の窓口だと思います。だけど、圧倒的に消費者金融のほうがUI/UXでまさっているんですね。何十万、何百万のお金を借りるまでのフローのかゆいところに手が届くUI/UX、これに行政は負けちゃってるという事実を真剣に考えなければいけないと思うんです。悲しいことですが、困って消費者金融に行く人が最後に行きつくところというのは見えているじゃないですか。どうしようもなくなったときに、最後は行きやすい方になってしまうんですよね。

行政手続きに民間に負けない手軽さを

横山代表理事:たとえば、検索エンジンで「お金に困った」「お金 借りたい」などで検索したとき、消費者金融等の広告だけではなく、「まずは公的な支援制度がありますよ」という情報提供がなされるなど、情報のアウトリーチも非常に重要だと思っています。そういうものができるといいですね。

菅原:本当ですよね。私はいつも思っているんですが、タバコだってそうじゃないですか。タバコはタバコとして売るけれど、外国に行くとガイコツの写真や肺の写真を入れている。タッチポイントに直接訴求するのが一番効果的ですよね。それには法律、制度面でのアプローチと、さらにUI/UX面でのアプローチがあるかなと思います。横山さんが以前、有力なツールは携帯電話だという話をされていました。個人情報の同意は必要だと思いますが、携帯電話って、貧困の人を含めても最後まで手放さないツールの一つなんですよね。

横山代表理事:そうですね。仕事を探したり、身分を証明するもののひとつにもなっていたりするので携帯電話がないと何もできません。

菅原:行政には個別の資金を貸してくれる制度をはじめ、いろいろな制度があるじゃないですか。最初の入り口は5万や10万なので、そこで行政につながればセーフティーネットになるのが、消費者金融に行ってしまうと利子がついて、返せなくなって落ちて行ってしまう。とてもよくある話なので、そこを自治体の関係者の方々にもよくご理解いただきたいし、単なる業務効率化やコストカットみたいな目的だけでオンライン手続きを想定するのではなくて、むしろ、セーフティーネットとしてのオンライン手続きを考えていただきたいですね。

横山代表理事:そうですね。

菅原:でもこれはまだ自治体などでは少し時間がかかりそうでしょうか。実際にいろいろなアプローチをされていてどう思われますか。

横山代表理事:オンライン申請については、マイナポータルを通して申請できる制度は非常に限定的ですし、NPOで生活保護の申請書をオンラインで作成する仕組みを開発されているところなどもありますが、団体の持ち出しで開発されています。先程の千葉市の取り組みなどもある程度の予算が取れるからこそでき得る施策だと思いますので、情報のアウトリーチやオンライン申請などに共通のシステムや予算がつかないと普及には時間がかかるように思います。

制度につなぐ部分をDXで

菅原:私は自分自身がソーシャルワーカーでもあり、しかもデジタルにも比較的明るい人間であり、行政の仕組みも詳しいですが、いろいろ議論をしていると、Govtech企業が対応するところは窓口セクションなんですよね。業務改革セクションでなければ情報のアウトリーチ化といった話にならないのは当然で、一方では、福祉セクションは福祉セクションですごい量の課題を抱えていて、これをどう変えていこうかというときに、デジタル技術の活用というところに思いを持っている人たちがけっこういるんです。すごくニーズがあってご相談も受けるので、最初の設計の段階で福祉の面をリンクさせるモデルを実は僕は作りたいなと思っているんです。

横山代表理事:それはぜひ、よろしくお願いします。

菅原:最近、僕のことをDXの人だと思っている人がたくさんいるのですが、僕のミッションは簡単で、誰もが自分らしく生きられる共生社会を作りたいということなんです。ただ、そのステップとしては、みんなが理解できるフェーズから入って、組織を変えていくというところまで行かなければならない。自治体でも同じ思いで市長さんや町長さんをやっている人たちがたくさんいらっしゃるし、思いが響く人たちもいると思います。またご相談させてください。

横山代表理事:すごく期待が持てるお話だと思います。セクターレスの取り組みができる菅原さんも、私のような支援者も、同じソーシャルワーカーですが、行政と困っている人の真ん中をとり持たれていろいろなことをできるからこそ、仕組みを作っていけるのではないかと思います。自分もプレーヤーとして引き続き取り組んでいきたいと思っています。

菅原:僕はゼネラリストなので、横山さんのようなスペシャリストがいてくださると心強いです。
ソーシャルワークの一つのポイントは、社会関係資本(ソーシャル キャピタル)をネットワーキングしながら一つの成果にもっていく部分ですよね。まさにDXを適用できるのはそういうところだなと思ったりしています。

横山代表理事:私はデジタル側の人間ではないですが、制度からの排除、本当に困っている人ほど制度につながるのが難しいという社会課題に対して、デジタルの力を活用してできることがあるんじゃないか思っています。同時に、課題の側の解像度を上げて社会に提示できるよう取り組むことが課せられた役割の一つなのかなと思っています。

菅原:実はこの思いを自治体関係者の人にもっと知ってほしいと思って、横山さんを今日のゲストにお招きしています。

横山代表理事:ありがとうございます。

次回は将来の社会に期待を持ち続けられる幸せについて

横山北斗さんとの対談は次回が最終です。
次回は、将来の社会に期待を持ち続けられる幸せについて、互いの考察を述べていきます。

 

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ポスト申請主義を考える会
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