【#ホンネのDX】「自然を模倣すること」へのチャレンジ|福島県西会津町CDO 藤井靖史さん(1)

#ホンネのDX 今回は福島県西会津町CDO 藤井靖史さんとの対談です。

藤井さんは現在、福島県西会津町で最高デジタル責任者(CDO)を務めており、以前は会津大学産学イノベーションセンター客員准教授もされていました。

また、シビックテックのCode for AIZUを立ち上げたという一面も持っています。

そんな藤井さんに、産・官・学を幅広く経験されてきた経緯や、最高デジタル責任者としての取り組みを通じて叶えたい未来についてホンネを伺いました。

起業家からCode for AIZUまで

菅原:早速私から、藤井さんを3つの視点でご紹介します。まずはなんと起業家なんですね。北米でベンチャー起業を経験されて、さらにそれをM&Aで売却して、シリアルアントレプレナーに。しかも、それが10年ほど前ということで、すごく早いですよね。藤井さんのベースには起業があるのですね。

藤井CDO:はい、そうです。

菅原:ビジネスがわかる人というのはすごく大切ですね。さらに、ビジネスだけでなくアカデミックの分野にも行かれていて、会津地方ではとても有名な会津大学の産学イノベーションセンターにいらっしゃいました。民間や省庁とのつながりがあるところで、そういう意味では大学だけでなく、どちらかというとアメリカなどでは当たり前の、民間と行ったり来たりするというスタイルで仕事をされている方です。会津大学というのは単科大学で、比較的コンピューター系が強いことで有名な大学ですよね。聞いたところによると、論文も英語だとのことですが。

藤井CDO:そうです、英語ですね。

菅原:最後に、これはたぶん今のメインフィールドだと思いますが、アメリカに端を発するシビックテックの枠組みで生まれたCode for Japanのフェローでもあります。地域版のCode for AIZUをスタートさせて、オープンデータのアドバイザー、伝道師をやりながら、今はいよいよ西会津という自治体の中にデジタル責任者として入って、その自治体の中でDXの指揮をされています。企業からアカデミック、行政のほうまで幅広く産・官・学の活動をされています。歩く産・官・学ですよね。

藤井CDO:ひとり産・学・官みたいですよね(笑)

菅原:そういう意味では、ビジネス、アカデミック、そしてシビックテックの3つで、技術的なものを含めて地域の行政をやられているという方です。

藤井CDO:ありがとうございます。菅原さんも本当にいろんな分野で活躍されていて同じだと思うんですけれども、僕も自由にやってきています。

菅原:私も結局、好きなこと、自分がやりたいことを追いかけていったら、立場が後から乗っかってきたというのが正確な表現です。ちなみに藤井先生と私はほとんど同世代で、この世代的には珍しいかもしれません。

藤井CDO:珍しいとは思いますね。10~20年前に生まれていたらこういう生き方はできなかったかもしれないので、生まれたのが現代でよかったなというのはありますね。

自然を模倣し、自然と一体になる社会

菅原:早速ですが、藤井先生が目指す世界観というものを自由に語っていただけますか。

藤井CDO:目指す世界観は、自然と一体というところかなと思います。最初にあったのは危機感でした。高校のときに政治を見ていて「あれ、これもしかしてなんかすごい間違った方向に行くんじゃないか」って思ったことがあったんですよ。危機感の中で、じゃあ世の中はどうあるべきなのかなということを考え始めました。当時はボーイスカウトをしていて自然の中でキャンプしたりする中で、植物や動物がとても多様性のある世界にあって、その中で競争があって、それが調和して美しいものが生まれるということを実感していました。そういう意味で、自然を模倣するというのが一番やりやすいのではないか思ったんです。じゃあ自然を模倣した社会ってどういうものかなと考えると、自然と社会というものがもっとつながって、一体になっているのがおそらくあるべき姿なのではないかと思いました。そういった自然と社会のマッチングをやっていきたいなという気持ちが根底にあります。よく言われる多様性ですね。すごく大事だなと思っています。

二項対立を崩していきたい

藤井CDO:いろんなところでそうなんですが、二項対立がすごく多いんですよ。

菅原:多いですね。

藤井CDO:ウチとソト、アナログとデジタル。全部、二項対立で語られます。でも、二項対立というのは、軸が1つしかない。こちらかこちらでないかという軸しかない中での判断なので、情報量としては1次元でしかないんですよね。単純でわかりやすいですが、世の中は1次元ではありません。世の中って3次元で、時間を足して4次元という複雑性のある世界なので、それを単純化して二項対立に持っていくという状況も、理解としてはまだ足りてないんだろうと思います。それを崩していきたいというのもあります。

会社を作ったのも、自然を模倣していくとうまくいくんじゃないか、自然を模倣してものを作っていくと、売れるものになるんじゃないか、という自分の中の仮説があります。自然の法則に従ってものを生み出すことで、会社ができたり、ものが売れたり、社会にリーチできたりするのではないかと。自分の人生としてそこにチャレンジしていっているというのが、自分の世界観というか、これまでなんです。
それが正解かどうかというのはちょっとわかりませんが、自然を模倣していくというのは、けっこういい線いってるんじゃないかなと思っています。

菅原:自然って何だろうと思うと、へんな言い方ですけれど、自然は自然な状態にあるから自然だと思うんですよね。だから、「好き勝手」という表現をされていましたが、自分の心に抗わず素直に従うということですね。

藤井CDO:そうですね。デジタルやITの領域もそうですけれども、あまり前例もないし、迷ったときの拠り所みたいなものが欲しくなるのでしょうね。それが「自然」なんだと思います。

次回は最高デジタル責任者としての取り組みについて

藤井靖史さんとの対談は次回に続きます。
次回は、藤井さんの西会津町最高デジタル責任者としての取り組みについて、具体的な内容や目指す姿を伺います。

 

会津の暮らし研究室
http://www.aizu-lsds.com/

CODE for AIZU の活動
https://www.civicwave.jp/archives/52126065.html