地域電子マネー香美市「kamica」

キャッシュレスインフラを整備し、地域活性化につなげる 「kamica」
キャッシュレス化は便利でメリットも多く、昨今では決済を切り口にした「地方創生」が注目されています。一方で、地域では「店主、地域住民の高齢化に伴い、現金の方が便利だ」「様々な決済サービスの中で、何を使えば良いのか」といった急速なキャッシュレス拡大に困惑する声もあります。
そのような課題に対し、高知県香美市では、地域経済の活性化と非接触決済の普及を目的に市と市商工会が連携して凸版印刷株式会社の「地域Pay®」を活用し、市内の加盟店のみ使える地域電子マネー「kamica(カミカ)」を導入しました。
今回は、ご担当者の香美市役所 商工観光課の石元幸司様、濱田さおり様へのインタビュー内容を交えて事例を紹介させていただきます。

電子マネーの導入で地域経済の活性化を目指す

―キャッシュレス化に取り組むきっかけは何だったのでしょうか?
高知県香美市は、地理的な位置関係の問題で住民の方が香美市ではなく、近隣の高知市などで買い物をする。そのため、地域経済が思うように活性化されないという課題感を持っていました。また、過去には子育て世帯、低所得者向けに商品券の販売も実施しましたが、前払いを必要とする仕組みなどのため予定よりも購入をされない結果となりました。そこで、国からの「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」の活用方法を協議する際には、地域経済が活性化され、且つ住民に広く普及できる仕組みをつくるべきだと考え「地域電子マネー」の導入を検討しました。


※香美市さま オンライン取材の様子

―導入して、どのような変化がありましたか?
まず、過去に実施した紙の商品券配布に比べて、電子マネーでは印刷や販売、店舗での手間が削減され、コスト面の課題を解消することができました。そして、『kamica(カード)』の普及を目的に、市民にkamicaを配布し1万円分の電子マネーをチャージすることで、加盟店での利用を促進することができました。
住民の方からは「市内にこんなお店があるなんて知らなかった」という声もあり、市外で買い物をしていた方にも、「市内で消費をしよう!」という意識付けが広がったことが実感できたのは嬉しかったです。他にも、中学生がkamicaにチャージされた電子マネーを使って「自分でモーニングを食べにいった!」といった声も頂きました。

※kamica(カミカ)取扱加盟店
(URL: https://www.kamisci.biz/service/kamica-list/

―高齢者の方に対しては、電子マネーの利用をどのように促しましたか?
香美市も高齢者の方が多く住む地域であり、やはりキャッシュレス化と高齢化のギャップには悩みました。初めはkamicaを送付しても、詐欺だと思われ、受け取り拒否をされてしまったり。確かに高齢者の方の気持ちを想像すると、突然カードに1万円入っているので利用してくださいと言われても、なかなか受け入れられないだろうと思いました。そこで、チラシやポスターによる周知や、電話や窓口での問い合わせの際に丁寧に説明を行いました。そうしていくうちに、次第にカードを使うことで便利になると理解いただき、「いつも行く決まった店で使えるならとても便利だ」と利用をしていただくことができました。

地域電子マネーを第一歩に、目指す地域のこれからの姿

―数あるサービスの中で、「地域Pay®」を導入した理由は何でしょうか?
初めは、他自治体の先行事例やSNS等で調べ、複数のサービスを検討しました。
その中でもトッパンさんの「地域Pay®」に決めたのは、大きく2つ理由があります。
まず第一に、今後の「展開可能性」の視点です。今回の施策を皮切りに、今後キャッシュレス化を手段として、加盟店の販売開拓や営業支援にまで事業を拡張したいという構想がありました。「地域Pay®」であれば、利用者は加盟店の決済タブレット端末で、カード裏面のQRコードを読めば支払いができたりと、利用者、加盟店の双方の利便性がとても高いと感じました。
第二に、予測不能な事態にも迅速に対応できる信頼がありました。トッパンさんのサービスであれば、他の自治体への導入実績もあり、それに加えて高知県に支店があるので、予期せぬトラブルが発生した時にも駆けつけてくれる安心感がありました。

※kamicaカードイラスト、名称は小中学生から募集
(URL:http://www.kochi-shokokai.jp/kami/02/

―kamicaをきっかけに香美市では今後どのような地域の姿を目指しますか?
2021年10月には、スマートフォンで利用できるアプリが登場し、決済や現金チャージの他、残高確認、加盟店検索も可能になっています。『kamica』は香美市のキャッシュレス化の第一歩として地域経済の活性化に貢献しています。今後は、カード番号で自動チャージできる特徴を活かし、市の事業に参加した住民への「行政ポイント」付与や、加盟店の営業支援にもご活用いただき、双方向で地域の活性化を目指していきます。

地域のキャッシュレス化を実現する決済プラットフォーム「地域Pay®

―トッパン「地域Pay®」について
「地域Pay®」は、地域で利用できる各種商品券やお買い物ポイント等をまとめてデジタル化し、地域のキャッシュレス化を実現する決済プラットフォームです。このような電子地域通貨を地域に導入することで、地域住民、加盟店・自治体が一体となり、自らの意識と力で民間消費の地域外依存度を低くすることができます。「地域Pay®」は、キャッシュレス化を推進することで地域を活性化することを目指します。

「地域Pay®」の強み・特徴
1. カードでもアプリでも利用可能
最初は、低コストに運用可能なQRカードを使い、広く利用者を収集し、後にアプリへの展開も可能です。
2. CPM方式でのQRコードの提示
幅広い利用者に受け入れられやすい、住民がQRコードを提示し、お店の人が読みとる方式を採用しています。
3. 端末
スマホ、タブレットどちらでも決済端末として使用可能です。導入効果としては特に、地域の消費活性化・観光客誘致において高い評価を受け、自治体や商店街などは「地域Pay®」を導入するだけで簡単に地域のキャッシュレス化ができ、また域内での消費循環や域外からの消費誘引も実現することで地域経済活性化につなげています。

―導入実績
長野県岡谷商工会議所、武蔵小山商店街、千葉県館山市、浜中町、香美市

※QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です。