防災DX事例 「豊橋市×Spectee」

自治体DX白書編集委員会は、11月26日に開催された、株式会社Spectee主催のセミナー「“防災DX”への挑戦~豊橋市が乗り越えた壁とは~」に参加しました。

災害の発生は、予測が難しくまた発生時には初動対応として、迅速な情報収集と共有が大変重要になります。災害時の被害を最小限に抑えるため、行政の役割として、災害に備えた防災DXに取り組みたいが、何から進めたら良いのかお悩みの方も多いのではないでしょうか。
皆さまの防災DX推進の一助になるよう、最新テクノロジーの活用事例を用いて防災に取り組む豊橋市(愛知県)の事例を紹介させていただきます。

豊橋市について

愛知県豊橋市は、人口約37万人が住む中核市です。東は弓張山系を境に静岡県と接し、南は太平洋、西は三河湾に面しており、豊かな自然と温暖な気候に恵まれています。450年以上続く豊橋発祥の「手筒花火」や、90年間市民に親しまれる「路面電車」など様々な文化が今も大切に残されています。その豊かな自然を享受する一方で、一部地域では洪水、高潮、そして30年以内に70%~80%の確率で発生すると言われている南海トラフ地震による津波の被害を受けることが想定されています。また、1999年9月には国内観測史上最大級の竜巻が発生し、その後も定期的に竜巻や突風が発生しています。このように“いつ災害が発生するかわからない”地域において、住民の生命、財産をはじめ大切な文化を守るために防災・減災への取り組みが進められてきました。そして、現在は防災分野においてDX推進にも取り組んでいます。

災害時における情報収集と共有

豊橋市は現在、災害時の情報収集と共有を行うために様々なシステムや機器を導入していますが、2017年に竜巻が発生した当時、豊橋市の災害対策本部には、特に情報収集するツールが十分ではなく、災害対応に必要な情報が乏しい状態でした。竜巻発生とその被害情報を初めに知ることができたのは、テレビのニュースが報じた視聴者のSNS情報であり、災害対応が後手に回っていたことが否めない状況だったとのことでした。災害対策本部には、問い合わせや連絡が入ることもありますが、それらは断片的な情報で現場の全体像が見えづらいものだったそうです。本来であれば、災害時に情報が集約されるべき災害対策本部に、情報が乏しいという問題を抱えていました。

デジタル技術の導入による変化

2019年8月より、Spectee Pro(スペクティ プロ)というAI等の最先端の技術を活用したSNS災害情報サービスの無料トライアルを実施しました。国の機関に出向した職員が豊橋市に戻った際にサービスを知っていたのがきっかけで、トライアルを試みることになりました。初めは、どれほどのSNS情報が収集できるのか、また防災の観点でどれほど役に立つのか半信半疑な部分もあったそうです。しかし、2019年10月に発生した東日本台風の際に、Spectee Proの災害時における有効性が確認でき今では正式に導入をしています。Spectee Proを活用することで、「リアルタイムで情報が収集」でき、SNSでの情報源は報道よりも早かったそうです。これらの情報収集により、実際の災害時にどのような情報が収集できるのか被災地支援の出発前に現地の状況を確認できたこと、それが大きな変化でした。

導入により現場に行く前に状況が確認できることで被害を最小限に抑える迅速な対応が期待できたり、長野市への支援に活用し効率的な情報収集を行うこともできました。一般の人がリアルタイムで集めた情報を、瞬時に集められ、それを元に総合的な判断をできるのがSpectee Pro導入のメリットだということが分かりました。豊橋市では、竜巻の災害で対応が後手に回ったという苦い経験もありましたがその経験を活かし、Spectee Pro やドローンのツールや、PHEVやテント等長期間活動ができる資機材も整えることで、自己完結型の支援体制も整えています。このような取組みが豊橋市の防災対応力のさらなる強化につながっています。

豊橋市の防災DX

豊橋市は、防災DXをはじめから目指していたわけではなく、「情報が早く欲しい」「共有したい」という事を第一に求めていました。それには、紙での情報共有ではスピード感がとても間に合わず、IOT、AI、ドローンの活用が最良だと考えたそうです。そこで、トライアルとして新しい技術を取り入れてみると、デモや実災害で組織全体がその有効性を認知し、結果として防災DXの一歩を踏み出すことになりました。「自助・公助・共助」という考えがありますが、行政が担える「公助」には限りがあります。災害時に現場を確認するにもまずどこへ行けば良いのか?情報が錯そうする状況で判断も遅れてしまいます。そこで、現場の状況を総合的に判断し、状況を判断できる情報に価値があります。Spectee Proを導入してから、平常時も別の地域の災害情報にアンテナをはることができるようになりました。

自治体で新しい取り組みをする際は組織内、文化的な困難がつきものです。その点では豊橋市もSpectee Pro導入時に様々な壁に直面しました。その中でも一番大きい壁は、担当者自身がそもそも素晴らしいシステムが存在しても知らないことや、仕組み理解していないことでした。新しい仕組みを熟知せずに、組織の財政当局、トップへ説明するのは非常に難しいことです。そこで、豊橋市では無料トライアルという形で導入し、様々な訓練や実際の災害対応の中で、トップも巻き込み見せる、使う機会を地道に積み上げました。例えば、訓練において実災害を再現することは難しいですが、Specteeでは、画面上で過去の災害時の様子を映し、シミュレーションをする事ができたので、臨場感のある訓練が実施できたそうです。組織全員が新しい仕組みを知り、それが良いものだと認識しなければ導入及び長く使い続けていくことは困難です。訓練をはじめ、普段から使えることを周知する機会を積極的につくり、組織全体を巻き込むことが大切だと感じたそうです。世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、さまざまな産業が打撃を受け新たな社会課題が大幅に追加していますが、その一方で自治体における課題解決が加速していると考えられます。それはWEBを使って講演ができること、オンライン会議が当たり前になったこと。これらの変化が、少しずつスタンダードになっていると感じています。今はIOT、AIを導入し防災DXの一歩を踏み出すためには、非常に良いタイミングであると考えています。

Spectee Proの特徴

Spectee ProはSNS、気象データ、河川・道路カメラ、人工衛星データ、人流データ等のデータを収集し、AI解析をすることで「危機」を可視化するデータ解析プラットフォームです。具体的には、SNSで上がってきた動画、テキストをAIが自動的に判断し、地図上にプロットすることで、解析した情報をすぐに画面上で確認することができます。そのため、必要な情報を「迅速に」「正確に」配信・可視化が可能であり、ハザードマップと重ね合わせたデータ分析も可能なため、災害情報を見える化できるのが特徴です。情報については、デマ・フェイク・誤情報等への対応として、1次チェックは過去データからAIが解析し、2次チェックでは専門チームが24時間365日体制で情報を確認しています。このように情報の正確性も担保されてあり、既に合計100を超える自治体・官公庁での導入実績があります。

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 株式会社Specteeについて

国内企業契約社数No.1、自治体契約数No.1のAI防災・危機管理ソリューション『Spectee Pro』を中心に、AI等の最先端の技術を活用したビッグデータ解析を通して、災害関連情報や企業のリスク情報などをいち早く提供する他、デジタルツイン技術による被害のシミュレーションや予測などを行っています。「危機を可視化する」をスローガンに、すべての人が安全で豊かな生活を送れる社会の創造を目指しています。

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